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「想いの実現は 力を付け、磨き、実を結ぶ」(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(80)
「想いの実現は 力を付け、磨き、実を結ぶ」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)

◆北京冬季五輪の活躍に学ぶ

北京五輪、我が国のメダルの獲得数は18個、冬期最高数であった。獲得選手には初出場での獲得もあり、メダルのランクを挙げた人、さらには、なんと4個を獲得、しかも銀3個に最後の競技では金と見事な実績を魅せた選手もいる。一方「メダルは取れ無かった、しかし、自己の最高の力を発揮できたことが誇りである」という選手もいる。さらには、出場はしたが報道の目立ちの少ない選手もいた。しかし、出場できたことは選考大会での勝者であることは事実である。

健闘された選手に拍手を贈り、そこまでの鍛錬の継続力に敬意を評する小生である。それは、自ら掲げた想い、目標に向けて、以前よりも 、前回出場時よりも力を付け、さらに磨き、現時点の極限レベルまで高めて出場した事実であるからだ。だからこそ悔しさはあっても、悔いは無いとの心境であろう。
 
そこには、心・技・体それぞれの現存力は最高であり、その相乗パワーを最高に発揮されたからである。それは、たとえ鍛えた技が最高であっても、メンタルのほんの小さな欠如があれば実を結ぶことはない。また、技術、心がいかに強かろうと、一寸した怪我、体調不良があれば、技・心の相乗力は削られる。さらに、団体競技ともなれば、全員が最高で無ければ、個人の心技体の欠如が足を引っ張ることになる厳しさがある。それは、カバーし合うチームの良さがあるから大丈夫だとの考えもあるが、それは相手が弱いときの論理であろう。
 
今回の勝負は、「一瞬」の実の結びとの言葉が心に響いた。跳ぶ、投げる、スタート、止める、繋ぐ等々の一瞬の技が一瞬の判断、決断により、「よし!」と心意気が乗っての瞬発力の発揮であったようだ。だからこそ、あの瞬間にこうすれば良かったとの悔いは無いのであろうと敢えて考察する。さらに、この一瞬に天が力をくれた、思いがけない力が加担されたとの言葉が実りの結果に対する感想加わることもある。多分、ここまでの、厳しい鍛錬をみていた天からの褒美であろう。勿論チームメンバーのアドバイスと引っ張ってくれたとの加力があった事も事実である。

◆飽くなき学びの挑戦を愉しむ

さて、この力は一朝一夕で創造することができるか。それは否である。なぜなら、今回のこの一瞬に向けての挑戦、鍛錬の習慣化を十数年以上取り組んできた選手達だからである。それは、苦闘であったかもしれない。

「以前、重量挙げ金メダリストの三宅義信氏から説かれた言葉に「苦労は楽しい。それは目標に近づくことだから…」と直言されたことがある。苦労は、金メダルを掴むその瞬間に一歩近づく事実だから楽しい。との解説だ。だからこそ、新たな苦労の見いだしは,国内だけの鍛錬の機会や、指導者の選択で無く海外に行くこともある。思い切って変える自己改善での身近な鍛錬では、食生活を変える、嫌いだった走りの練習に敢えて取り組む、肉体の改造への取り組み…等々、多くの実践例が紹介された。

また、団体競技では、メンバーでの協働生活を可能な限り見いだし、飽くなき競技への議論、それは反省と更なる強みを創り出す。そこには、個々の力量アップへの相互指導の学習力と習慣化されたチームパワーが、実践の場で一瞬に一致した心と、智恵と技とがチームの結集として発揮される。だから、例えミスがあってもそのプレーヤーを攻めない。「いいよ!」との笑顔のチームパワーが直ぐ形成される。メンバーが紹介した「笑顔がある事は、諦めていないことです」との言葉がふと浮かぶ。

◆導き、支援者へ謝念がより学びの充実を生む
 
世界最高の闘いとは、このような学びを確認できた五輪であった。そして、メダリストのインタビューでの応答にも学びがあった。それは、今回も「感謝」「おかげ様」の言葉が必ず最初に紹介された事にある。感謝の対象は、心技体で、それぞれの専門分野で的確な指導を施してくれたコーチであり、支援しつづけてくれた家族であったり、企業等の支援組織であり、そして、応援し続けてくれた地元はじめ国内外の人への感謝であった。勿論、厳しい天候や気温に左右される競技会場の最善の条件整備への関係者に向けられた声に我が国の選手らしさを感じた。
 
選手の闘い、成績の陰にはこの人あり、まさに、力を付け、力を磨き、力の実の結びには、自身の飽くなき進化への想いに向けた苦労を愉しむ努力の重ねに、その努力を最適にさせていく指導力であり、継続できる環境の充実である。
 
報道に釘付けとなり、競技経過、結果後の解説、選手の言葉、家族、出身地の恩師、友人等々の生の声をお聞きする範囲の学びであった。

◆新たな年度の取り組み時、成長パワーをどうする

さて、企業活動、社員個々とっても、新たな目標・戦略・戦術を掲げた時から、力を付ける、磨く、実を生む働きかけは不可欠である。それは、人材の育成に他ならない。なぜなら、企業の成長は社員の成長の総力アップだからである。しかも、競合企業、市場は世界、それは、持続させる、新たな開発力の種の発掘そして、実の結びの過程は世界規模でのネットワークであり、協働関係づくりを必要しされる環境である。とすれば、企業での育成パワーの推進は、いかにあろうか立ち位置に準じて確認してみよう。

●トップは、自ら学び、育成投資に最善を施す。それは、企業はトップの器以上に大きくならないからであり、トップの人間力の向上年輪が大きくなった分だけ社員の力がアップし、生かされる。なぜなら、企業活動の最終決断はトップにあるからである。例え社員の持つ凄い力があっても、生かす手腕はトップによって発揮が左右される。

●上司は、自身の目標、戦術の実現は、部下育成によって決まる。それは、目標は新たな高い頂上であり、部下の現有能力では行き着かない。育成せずにできるというならそれは、ここまでの目標レベルの低さであり、部下の能力を最大発揮させていない証である。だからこそ、部下の目標設定に対する上下両者の納得は、不足能力の育成方策を示しているはずだ。そこには、自己啓発の支援、学びの機会(社内外)の提供、直接指導、多能化の育成プランなどを提起することに他ならない。、

●部下、メンバーは、新たな仕事の仕方を編み出さねばならない。それは、スピードを高める、効率を挙げる、品質を高め、不備不良による付加価値を生まない時間を作らない。その為の方法の改善である。その実践は、新たな知恵は、新たな知識、情報、技術の習得による学びのインプットのより、アウトプットが生まれる。

学ぶ事は変える力である。だからこそ、自己啓発による自らの学習力で力を付ける。具体的には、上司、社内研修、参加申請による学びの機会は貪欲に学ぶ。さらに、将来に向けては自己投資として「時間、金」を最適に生かす事である。肝腎なことは「力は、単なる評論家的自己満足でなく、実践により習慣化し、本物にする」事である。その証は、目標達成率に魅せる実の結び如何である。
 
努力は報われないことがある、その現実は次に向けた力の高めで悲願達成との言葉に変わることになろう。それは、人の持つ可能性は無限にあり、磨き方、高め方の育成方法は無限にあるからだ。今回五輪でも人類初の技術、大会新記録の事実表現や、また、将棋界での藤井棋士の快挙もあった。ビジネス界でも、類する事実として、初、新た、独自の商品開発もある。それは、ようやく世に出たものもある。

この事実は、降って沸くわけでもなく、長い研究、数え切れない試作、失敗の連続による得られたデータによる新たな見いだしの実りとしての快挙である。まさに、本人による学ぶ力と指導者の学ばせるちからの結集による変えていく力である。

◆期待条件に対応した15の力
 
人生100年時代、世界的規模での鳥の目の視点で変化を捉え、社会貢献、多様化された思考、働き方改革などの活躍条件が提示される現在である。ならば、対応した社員力とはどのようなキーワードがあるのか考察し、次の15の力として提起してみよう。

①挨拶人間で常に周囲にオーラを醸し出せる明朗闊達力
②職業観に基づき、高い専門力を磨き、一目置かれる存在感を示せるプロ
③常にCS(顧客感動)を高める顧客目線で、自らの活躍施策を発想できる変える力
④上位者の示す方針に対して、累積的改革に個性を生かして貢献できる稼ぐ力
⑤環境、社会貢献に国内外、社内外でも実践する社会性に富む言動力
⑥上位者の依頼事項、当事者意識で取り組み、主体的判断と責任感を持った遂行力
⑦新鮮な情報、知識を探索し、自らの仕事に落とし込んで柔軟に対処する構想力
⑧事業家マインドを持ち、人、モノ、金の最適活用で稼ぎ出す経営力
⑨異文化を受容し、国際的に適合できるグローバル感覚を持った多様なる思考力
⑩上司は部下、メンバーを生かし、育て、目標を必達できる育成力
⑩関わる人の信頼に基づく協力関係を築く、リーダーシップによる牽引力
⑪社内外に向けて幅広い活躍を実践し、人脈形成のできる対人関係力
⑫倫理観を強化し、絶対的に不祥事の発生がない信用力
⑬国内外で企業ブランドを、自ら評判を高めるセールス力
⑭プロは自分の金と時間で勉強する との自己投資も惜しまずの学習力
⑮将来のライフプランに、起業を目指す気概保有力
ということである。
 
コロナ禍だからこそでき得た北京五輪報道に時には釘付けとなり、競技経過、結果後の解説、選手の言葉、家族、出身地の恩師、友人等々の生の声をお聞きする範囲での学びがあった。企業活動では、新たな年度を迎える準備の時期、新たな戦略、職場、個人の目標挑戦に向けての人財育成の推進は如何ようか。北京五輪での活躍から得た示唆を、どう生かし、その実践施策を習慣化し持続的経営の肥えた土壌づくりにお役立て頂く事を祈念しての執筆である。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/