第1回では、コロナ禍の労働市場の現状を把握しながら、仕事の不安は生活への不安につながり、健康を悪化させることを説明した。そして仕事はメンタルヘルと深く関係することが確認できた。
コロナ禍で多くの失業者や悪条件あるいは不安定な条件で働かざるを得ない人が増える可能性が高い。コロナパンデミックは様々な分野において影響を与えている。それに伴う対策を講じる中で色んな変化が進んでいくと思われる。今までとは違う新常識が通用する、「ニューノーマル時代」に合わせて社会に大きな変化が起こり、人々の考え方も変わりつつある。
下記、損保保険会社が行った「仕事に対する価値観の変容に関する意識調査」によると、コロナ禍で仕事に対する価値観に変化があったと答えている人は4割を超えている。この結果から、人生における仕事の位置付けに意識の変化が現れているのが分かる。
図1.2021年11月、全国の仕事に従事している20歳以上の男女約1,000人を対象に行った調査
具体的にどのように変化が起きているのかを説明すると、「働き方」、「働く意義・目的」、「仕事のモチベーション」といった項目で変化が起きていた。
以前よりも重視したい項目には「プライベートの活動」、「暮らし」、「家族」といった答えが多く、生活の質をより重視したいという意識が高まっていることが分かった。
次は、某人材会社が行った「コロナ禍で今後の生き方について考え方の変化」についてのアンケート調査を紹介する。
図2.2021年5月、働く日本全国の男女800人を対象に、コロナ禍が「人生観」にどのような影響を与えているかをテーマにした調査(アデコグループジャパン)
「人生観」の変化についても、全体の約4割近くが今後の生き方について考え方が変わったと答えている。特に20・30代の若い女性を中心にコロナ禍によって、人生観に変化があり、世代別には20・30代が45.0%、40・50代が34.0%とコロナ禍の影響で人生観が変わったと答えている。
これらの意識調査で、「仕事観」と「人生観」の変化はいずれも4割を超えている。これからは、コロナ禍で変化した価値観に従い、私たちの働き方や暮らし方が変わっていくことが予想される。
ここで筆者は、コロナ禍を機に私たちの生き方や仕事に対する価値観を明確にする時期と捉えるのもいいと思う。人生の目的、あるいは暮らしの質の向上を図るため、働くことの目的を見直してみるチャンスかもしれない。仕事の位置づけや仕事以外に重点を置くことで自分に合う生き方が見つかるだろう。
もし、今も就職に悩んでいる求職者がいれば、仕事と人生を分けて考えることをお勧めしたい。仕事は生きるための手段であり、仕事のために生きることではないと筆者は強く思っている。自分の「人生観」や「仕事観」を明確にした上で、自己投資などにエネルギーを使って、自信をつけることを先に行っていただきたい。自分に自信がある人は不安な気持ちから解放され、雇用形態や条件にこだわらなくなる。
無論、労働需要が増えなければ失業問題の根本的な解決にならない。新たな雇用を生み出すためには、政府や企業に対策を講じていただくのは言うまでもない。