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【新連載】第1回「中計を買ってみたい!回転寿司をめぐる2社」千葉 明

千葉 明氏 (金融・株式・経済ジャーナリスト)

群馬県前橋市生まれ。明治大学政経学部卒業。日本短波放送(現日経ラジオ社)入社。経済評論家・亀岡大郎氏に師事。82年独立。新聞・雑誌の原稿作成、書籍上梓、講演活動に従事。

 

その昔「清水の舞台から飛び降りるつもり」で飛び込んだ寿司屋の値札には、「時価」と書かれた品が少なくなかった。せいぜい「並み一人前」くらいしか、注文の仕方がなかった。そんな事態に革命をもたらしてくれたのが、回転寿司。もっと正確に言えば鈴茂器工(6405)開発の、世界初の「寿司ロボット」の存在。寿司ロボットの普及が回転寿司屋のチェーン化を進め、寿司は「特別の時に食べる、高いもの」から解き放された。

 鈴茂器工が寿司ロボットの第1号を開発したのは1981年10月。私が30代入りした直後のことだった。「鈴茂器工はいま、どんな立ち位置にあるのか」を、調べなおしてみた。

 鈴茂器工は1961年に、故鈴木喜作氏により設立された。製菓機械のメーカー。「最中あんこ充填機」などを造っていた。最中にあんこを入れる機械…企業文化継続の妙を覚えた。そして寿司ロボット開発後、その改良・改善の道を歩み今日の礎を築いていった。前3月期で手掛ける商品の売り先は(国内向け)、売上高比率で「スーパー:36%強」「寿司屋:25%弱」「工場・給食向け:14%弱」「レストラン・食堂:11%弱」「テイクアウト・宅配:11%弱」という具合。そして前期でみると、総売上高の23.4%を海外が占めている。健康食=寿司が背中を押している結果だ。

 寿司ロボット開発に関しては、「寿司職人がシャリを握る一連の動作の研究を重ね、手でつまんで崩れず口に含んでほぐれる食感」を追い求めたという。特筆すべきはいま「ご飯」に関する幾多の機械を開発している。無論、回転寿司チェーンの厨房では寿司ロボットがシャリをつくり続けている。そしていま、1月5日の日経XTRENDの表題を真似れば【すしロボット40年の進化 厨房の「裏方」から表舞台へ】。世界初の商品を世に問うている。 

中計にも「拡充商品」として掲げられている、ご飯盛付けロボット(Fuwarica)などはその好例。社食・食堂・ホテルなどが主な納入先。盛られたご飯の量に、「こんなに沢山は食べられない」「これじゃ少なすぎるよ」といった体験を持つ人も少なくないのではないか!?―そこでこのロボットには「少・並・中・大」or「●g、■g、▲g、★g」といったボタンが据え付けられ、ご飯の量を選べるといった代物だ。

直近の収益動向は、盛り返し基調。至る2025年3月期の中計は、「売上高150億円(21年3月期比58%強増収)、営業利益22億5,000万円(2.5倍弱増益)」を謳っている。海外市場の拡充動向も含め、推移を見守りたい。

回転寿司といえばFOOD&LIFE COMPANIES(3563、スシロー)。水留浩一社長は、「『魚が取れない時代が現実化する中、主要魚類を安定的に確保する』ため、養殖業者やゲノム編集に注力する」と思いを公言している。ゲノム編集は、遺伝子を効率的に改変する技術。品種改良の期間を大幅に短縮することが期待できる。既に数社と共同開発を進めている。安定的な魚種確保は「寿司を身近な食べ物」にしてくれた回転寿司店に不可欠。期待にしたい。

スシローはコロナ禍というマイナス要因を背負いながら今期も、国内:47~62の新規出店(前期52店)を計画。水留社長の姿勢、そして至24年9月期の中計は『売上高:4,200億円:年平均増収率16.16%。営業利益:330億円:同17.8%。総額750億円(手元資金+営業CF)の投資。資金の4割近くを、中国を中心に海外出店に充てる』と期待を抱かせる。

共に資産形成株。スシローは17年の上場初値に対し本校作成中の時価は分割等を勘案した調整値で4倍。鈴茂器工は2.5倍の株価上昇となっている。