【真田幸光の経済、東アジア情報】
「IMFによる来年の厳しい経済見通しと、中国経済の今後」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
比較的、客観的、科学的、中立的な国際機関である国際通貨基金(IMF)は、来年の経済成長予測を引き下げている。
IMFは10月11日<最新の世界経済見通しを発表したが、チーフエコノミストのピエール=オリヴィエ・グリンシャ氏は、
「最悪の事態はまだ来ておらず、多くの人にとって2023年は景気後退のように感じることであろう」
と厳しいコメントを行っている。
そして、来年の世界全体の経済成長予測を、本年7月に示した前回の予測から0.2ポイント引き下げて2.7%に下方修正した。
これは主として、ロシアのウクライナ侵攻と、長引くインフレによる生活コストの上昇によるものであると説明されている。
また、中国本土の景気減速についても言及している。
米国については、IMFは予測を1%に据え置いてはいるが、連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げが米国経済を冷やし、来年の経済成長率は、今年の見通しである1.6%未満に減速することになろうと述べている。
ユーロ経済圏については、IMFは予測を0.7ポイント引き下げて0.5パーセントに修正した。
ウクライナでの戦争がエネルギー価格を押し上げ、経済活動だけでなく人々の生活にも悪影響を与えていることを織り込んでいる。
中国本土に関しては、IMFは予想を0.2ポイント引き下げて4.4%としている。
そして、中国本土の不動産市場の急速な減速と、世界経済への悪影響拡大の可能性についても触れている。
不動産セクターは、中国本土の経済成長の約5分の1を占めているものであり、不動産不況が顕在化すれば、その悪影響は想像以上のものとなるとしている。
そして日本に関しては、IMFは予測を1.6%に下方修正した。
物価の上昇が今後更に消費者の支出を抑制するとIMFは見ている。
この10月、IMFはかなり厳しい経済見通しを示したと見ておきたい。
但し、中国本土経済に関しては、筆者は、中国共産党大会に於いて、習近平体制三期目突入となれば、政策姿勢を転換、景気拡大に向けて政策的にアクセルを踏み込んでくる可能性はあると見ている。
G20諸国の財務相・中央銀行総裁会議がワシントンで開催された。
今回の会議では、世界中の為替変動リスクとインフレ増大リスクの拡大による影響について議論した。
エネルギー価格の高騰と、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた世界的な食糧危機が、議題のトップになっていた。
各国金融当局者はまた、米国での継続的な利上げがどのように世界経済を減速させ、また更なるインフレに繋がる可能性があるかについても話し合っている。
会談後、日本の鈴木財務相は、
「先進国の金融引き締めが世界に及ぼす悪影響を警戒する必要があることを会議メンバーに伝えた」
とコメントしている。
更に、世界中の金融界のリーダーたちは、これまで経験したことのない圧力に直面しながら、経済を安定させようとしている。
また、これに合わせて先進7カ国(G7)の金融リーダーも、別途、会談を行っている。
その後、声明が発表され、
「今年は世界中で通貨のボラティリティが高まっていることを認識しており、状況を注意深く監視する」
と述べられている。
尚、こうした中、日本銀行は、
「現状での日本の政策金利の引き上げは不適切である」
との姿勢を示したとも言われており、日本の政策金利引き上げは今のところはないと言うことが確認されたとしている。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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