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「2022 年年末賞与の予測」(蒔田照幸)

【特別寄稿】
「2022 年年末賞与の予測」

蒔田照幸(株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役) 

①経済状況
日本の4―6 月期実質GDP は、まん延防止等重点措置の解除で個人消費が回復し、前期比年率3.5%増(2 次速報値)となった。ただ、本レポート作成のこの10 月末時点では、ロシアのウクライナ侵攻が長引いて様々な悪影響が出ている。日常生活では、食料品、ガソリン、電気料金など物価の値上げラッシュが続き、旅行割引キャンペーンがあるとは言え消費は冷え込みそうである。

企業に目をやってみよう。輸出産業は円安効果がありそうだが、あまり報道されない。やはり海外需要が減っているのだろうか。原材料を仕入れる企業は、円安は無論だが、原料自体が品薄だし供給網も乱れて原材料高となっており厳しい状況にある。

特に厳しいのは中小企業だ。大手企業は原材料の値上がり分を価格に比較的転嫁しやすいが、中小企業はそれが難しい。先行き不安から景況感が厳しくなって当然だろう。

②雇用情勢
飲食業等のパート・アルバイトの採用は時給も高騰し依然として難しい。正規社員もIT 人材が牽引役となってその他の賃金も上がり採用が難しくなっている。正規社員の初任給については水準のみならず人事制度の変更を含めいろいろな角度から検討して頂きたい。いろいろな角度とは仕事の見直し、デジタル化そして将来を見据えた要員の見直しである。

➂企業業績
4-6月期の法人企業統計(財務省)によると、全産業の経常利益は前年同期比17.6%増、製造業は11.7%増、非製造業は21.9%増であった。新聞に目をやると「日本電産、円安で最高益」の記事が掲載されている(日経新聞朝刊10/25)。

最近の新聞記事を改めて見てみると大手企業の「増益」記事が多い。中小企業も大手企業程ではないにしろ厳しさはあるが復活しつつある。

④賞与総額予測
賞与は主に業績に左右されて然るべき性格のものだが、世間相場は業績のみならず失業率、求人倍率、先行きに対する景況感等に影響される。自社の賞与総額は業績を睨み決定すればよい。当社では、今期年末賞与を次のように予測した。

主要企業 845,000 円(8.0%増)
中小企業 400,000 円(26.6%増)

中小企業はコロナ禍での賞与の支給に随分と苦労した。「倒産させては元も子もないわけだから、今期は出さない」「無理をすれば少しは出せるので、頑張ってほしいという意味で少額だが支給する」いずれも正解だと申し上げた。今なお厳しいという企業があるのも事実であるが、多くの企業で復活しつつある。

中小企業の増減率は、コロナ禍で大幅な減額を行った企業とみて頂きたい。厳しい経営状況の中でも大幅な減額を行わなかった企業はもっと小幅の増となる。

 

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蒔田照幸((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など約700社、人事コンサル歴35年、懇切丁寧な指導で定評がある。人事評価分野では、2018年に大学と提携しAI投影法を開発。京都府立大学卒。1949年三重県出身。

◎賃金人事コンサルティングオフィス
 http://bit.ly/2RGZxpl