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清話会の台湾視察で気づいたこと(山本紀久雄)

【特別リポート】

清話会の台湾視察で気づいたこと

山本紀久雄氏(経営コンサルタント、経営ゼミナール代表)

山本紀久雄氏の過去の連載記事は、こちら

台湾に行くと話すと、すべての人が「良いですね!!」という。
「食べ物が美味しい」「暖かいから」という理由。
その通りだが、今の台湾は違っている。
それを岸田首相が「ウクライナは明日の東アジア」と説く。
ロシアのウクライナ侵攻が、東アジアでの中国による台湾侵攻を連想させるからである。
ということで、今回は、台湾侵攻について現地で何かつかみたいと台湾に向かった。

機内で読んだ『台湾vs中国』(近藤大介著、ビジネス社 2021年)では、台湾の人々の政治認識について次のように記している。
今の台湾では世代交代が顕著で、台湾人の80歳代以上は、昔から蒋介石総統の国民党に投票する傾向が強いが、この子供である50歳代は、その時々の政策や雰囲気によって投票行動を変える。
ところが20代の息子・娘は「政治=民進党」という意識ということで、台湾では「親中派」は絶滅危惧種になっていく傾向であるという。
つまり、追い詰められているのは中国側のようにみえる。

ところが最近の台湾では新世代が出現しているとも述べる。
これまで「国民党シンパ=親中派」と、「民進党シンパ=反中派」という大まかなくくりだったが、現在の20代前半の若い台湾人は、「親中派」でないけど「反中派」というわけでもないというのである。
「自分たちは中国大陸が強国になろうが、崩壊しようが、どうでもよい。海の向こうで勝手にやってくれという感じ」で、その代わり「一切台湾にはかかわってこないでほしい」
「自分たちは大陸と一切関わりをもちたくない」という意識が強いのだという。

ではこの世代は何に関心があるのだろうか。
それは「スマホと半径5mくらいの出来事」だという。
このような「超内向き世代」が台湾で育っているらしいが、この層は中国にとって、ある意味で「反中派」よりも厄介だろうという。
これが『台湾vs中国』(近藤大介著)に記されていて内容であるが、そこで、この新世代の意識について、日本語堪能なガイドに尋ねると「その通りです」と迷わず回答が戻ってきた。
街中をオシャレな姿で歩いている若き台湾人男女、政治的には難しい構造人間になっているのだ。

次に、台中で日本の居酒屋があるというので行ってみた。
台湾には20年以上住んでいる日本人が社長の居酒屋である。
店頭に日本着物生地で作った巨大な行灯が目につき、それを褒めると「よくぞ言ってくれた」と、急に饒舌になった。自慢の行灯なのである。
それから雑談になったが、良い機会なので中国の台湾侵攻について尋ねてみた。
すると社長が明確に強調する。
「台湾人はウクライナのように抵抗しないだろう」、
「中国が侵攻してきた場合、素直に政権当事者のいうとおりになってしまうだろう」、
というのではないか!!

これにビックリすると、さらに社長が続ける。
「日本人の方が中国による台湾侵攻を真剣に討議しているように感じてならない」、
「今の台湾人の心理はよくわからない」ともいう。
台湾に長く住みついていており、台湾人の客とも日ごろから接している人物の発言である。これには考えさせられるが、実際に台湾現地で聞くと、とても興味深く、参考になった次第。

改めて、「現地確認」「現場視察」が大事、ということを再認識した清話会台湾視察だった。

 

山本紀久雄————————————————
1940年生まれ。中央大学卒。日仏合弁企業社長、資生堂事業部長を歴任。現在、㈲山本代表取締役として経営コンサルタント活動のほか、山岡鉄舟研究家として山岡鉄舟研究会を主宰。著書に『フランスを救った日本の牡蠣 』『笑う温泉、泣く温泉 』等がある。

(山岡鉄舟研究会)    http://www.tessyuu.jp/
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