髭講師の研修日誌(99)
「訊く(学びを請い)・聴く(楽しく学び)・効く(話の効果)の話し方を楽しむ」
澤田良雄氏 ( (株)HOPE代表取締役)
「点から線、そして面に広がるお客様へお役立てを楽しむ、それは、お客様に寄り添った話し方が肝心、自分はそのとき(点)の対応だったと気づきました。それは、出会いでお役立ての機会を生かし、そして顧客として長くお役に立てる(線)、そして、その喜びを他の方に紹介頂ける(口利き)(面に広がる)ことだと確認できました」「何をどう話すかよりも本心からほとばしる、これを伝える。それは、お役に立てるとの仕事の喜びだからである」「講師の「父は職人、だから、人前で挨拶するなどもってのほか。しかし娘の結婚式でのどうしてもせざる得ない新婦側代表での謝辞。それは、「ありがとうございます」の一つの言葉。それは、足が不十な娘(筆者の姉)が中学を卒業し、遠方の地で、美容師の道を志し、住み込みで家事のまかないもしての辛苦の努力を重ねて資格を取れ、そして、この地の方々のおかげで今日の晴れ姿・・何もできなかった父親としての自省の謝辞でした。・・・「ありがとうございました」・・「ありがとうございました」・・・・」「ありがとうございました」・・・・と深々と頭を下げ、言葉が途切れ、涙しての深謝(沈黙)・・・・。たったそれだけの言葉。臨席者の一つの拍手・・やがて拍手の渦・・。この話を伺い、どんなきちんと用意された内容、言葉よりも、心から届ける話は言霊であると感動しました。もちろん講師が、涙しての話ぶりだったことも有ります」「演習で、一所懸命、丁寧に伝えても、言葉だけでは、正しく伝わってないことを実感しました。」「話す前にこれを言ったら相手はどう思うか、また話した後、あれこれ考えてしまう自分、これを超えて、お役に立てる喜びの実現に、とにかくまず話してから・・の心持ちがいいですよと背中を押された感じです・・・・。
これは、先日、お役立てした「日本初・ソーシャルセラピストカレッジを開校して、全国的展開に発展されている(株)L社の話し方教室の受講所感の一部の紹介である。代表のI氏は、美容業界での抜群での活躍のキャリアを持ち、海外留学を経て、独自のエステック技術を開発、30年余に渡って活躍してきた人である。筆者の敬愛する人でもある。
従って、当研修受講者も、人柄、見識、そして学び力もさすがである。だからこそ、日頃の活躍での話し方、聴き方の確認の機会として、演習を適切に入れ込んでの研修の実施である。その確認の元は次の5点、それは、話す事の基本事項である
①話すとは、自身の持ちうる力を生かして、相手のお役に立てる喜びを実現する橋 渡しのスキルである。それにより相手が喜び、その感謝が話し手に返礼される
②心の表現が、言葉であり、語調であり表情であり、話し手の振る舞いである
③伝わる話とは、筋道立て、わかりやすく、感じよく話すことである
④話す基点は、話せる感謝、お聴きいただく感謝、お役に立ってる実践に感謝です
⑤誰が話しているか、それは、実績の豊かさ、人間の徳の評価である
さて、L社で活躍する人の職業観はどういうことか、それは「お客様の思いに寄り添い、心を通わせ、本質を見極め、情報を把握し、そのためには、直接温かい手の温もりで施術する事が大切であり、それが真の美と健康、そして、癒やしを提供することです」である。としている。ならばどのような話のやりとりが最適であろうか。それは、
訊く→聴く→練り直す(内容の再検討)→話す→訊かれ(相手からの問いかけ)→答える→この繰り返しですすめる ことである。
なぜなら、寄り添う話し方は、勝手に準備した話を一方的に放つことではない。どう話すかの前に、どう聞いて頂くかをまず考え、相手に対応した話し方を考えることが第一であり、それは、相手のことを知ることからである。それは相手の理解レベル・体験・年齢、自分との親疎の程度・・の特性に着目し、情報を得ることである。もし軽んじれば、「わかりません」「私なりにわかった」「難しい」「興味がないことだから」・・などとの現実が起こる。実は、「わかった」「わからない」の決定は聞き手に有るからだ。従って、こちらが、「あれだけ話したのに」との言い方は、単なる話し手の自己満足に過ぎない。ではその場での対応はどうする。それは訊くことである。
1.「訊く」で学びを楽しむきっかけ作り
「訊く」とは、不明点や疑問点を問いかけることである。その具体的な実践策は
●初めてお会いしたときの相手との親和感を育むその、極意は、何を話そうでなく、相手から学ばせていただくかに着目することである。それが「訊く」ことの実践。そこで訊くためのキーワードを紹介すれば、それは、「私の問いかけは衣食住」。これを覚えておけば良い。キーワードを一覧すれば、
ワ 私ごと、出身地、友人、ただし他人に話せる可能な範囲で
タ 旅の話、旅先の思い出、出来事
ク 工夫、アイデア、苦心談
シ 仕事に関すること、業種、立場・・
ノ 能力アップに関する話、自己啓発
ト 得意なこと、趣味、習い事、特技、楽しみ、友達
イ 生きざま、人生に関すること、座右の銘
カ 家族、ご親戚
ケ 健康、運動、健康食品、
ハ 流行、ニュース、出来事
衣 ファッション、着るもの、装飾、化粧
食 食べ物、うまい、安い、珍味、こだわり、おすすめのお店
住 住宅、住所、住みたい都市、地域、
これらの話題は、年代に関係なく、誰でも興味を持つことで、どのような相手に対しても臆することなく、話をすることができ、その実践は学びの機会を大きく広げてくれる。 例えば、「教えていただいてよいでしょうか。〇〇さんのご出身地は、どちらでしょうか」と問いかけ、相手の答えに自分の知っているエピソードを添えて、「そういえば、私の知り合いもそこだと言っていました」と共通点を挙げられれば、一挙に親しみを増して来る。
そして、「ところで、あなたはどちらの出身ですか」と相手からの問い返しがあるのが現実。「ありがとうございます。私は〇〇の出身です」と自身を紹介していけば良い。
*もし、問いかけても相手が、応えてこないときには、「今話したく有りません」「興味がありません」と教えてくれているのである。
●おすすめへの問いかけは、それは、不満、不便、不信、不要、不安・・などの問いかけです。
「現在気になることはありますか。例えば不便なこととは・・」と問いかけ答えから話の糸口を学ばせて頂く。ここから、その解決に向けて、おすすめする商品に繋げていくことである
●考えを巡らし新たな方法、新たな商品のアイデアの提案をするこの場合の訊き方は、「先のご指導ありがとうございました。
指導内容に基づき、私はこのように考えをまとめてみましたが、いかがでしょうか」「私案が作成できました。つきましては、お目通しいただき、ご意見を頂きたく、お願いいたします」との問いかけである。そして、
2.聴く(楽しく学ぶ)
「聞く」は一般的な聞き方であり、「聴く」は注意深くことで漢字を分解すると、十四の心と耳となる。すなわち心を汲み取ることを意味していて「傾聴は愛なり」との言葉は相手を受け入れて、心と耳、すなわち全身全霊を傾けて聴く、学ばせて頂くことである。それはより添うとは相手の心境、相手の考え、要求、欲求を汲み取って、それに応えていくことの前提であるからだ。もちろん応える事柄はできうる限りである。確認して診よう。
寄り添いを施すには、学ばせて頂くこと、それには、楽しく、本心を話して頂く働き掛けがどうして実不可決であり、それは、話す事を楽しんで頂く聴き方である。ならば、その聴く極意を次の10項目確認してみよう
①話していただけることに感謝する心を目に託し、優しい視線をかけます。
②下を向いたり、相手の視線を避けたり、他のことをしながら聞くことはしない。それは聴くことを拒否しているとのシグナルに写る。
③無表情、無言で聴かず、聴きながら反応を示します。うなずき、「はい」と答えて、言葉を受け止めます。
④相手がこういう人だからという勝手な思い込みを排し、学ばせていただく感謝の心で受け止め、正しく理解することに努めます。
⑤なぜそのように言ってくれているのか、欲求、要望の心を汲み取りながら聴くことで、感謝の心が高まります。
⑥その時、場で話の理解だけでなく、以前の話とつなげて聴くことで、さらに理解が深まります。それは、相手の方は、点(その場)ではなく、線(以前からの継続)で話します。そのことに気づ
けば、いつも気にかけてくれていることに気づき感謝、さらに本心などがつかめます。
⑦相手が話すときは、あらかじめ準備や心配りがあります。この点に対する心も組み入れてお聴きします。心配りに気づいたときには「お忙しいところご配慮いただきありがとうございまし
た」とお礼の言葉を加えます
⑧聞き流し、早とちり、さえぎり、自分が言うことを考えながら聴くことはやめましょう。相手に不快感を与え、学び、育みをいただく機会を失います。
⑨お聴きした話は、自身の話に組み入れて話します。
「先ほどお話しいだきました〇〇につきまして、私も同感です。考えが近いことは本当にうれしいことです」のひと言を添え、自身の話しに活かします。
⑩次の出会い時には、お礼の一言を述べます。「先日は、いろいろお話しを頂 きありがとうございました」と先手での声がけです
そして、聴き方のタブーは
*何かしながら聞かない*自分の次に言うことに気持ちをとらわれすぎない
*「はあ」「べつに・・」「はい、はい」の言葉は使わない
*話し手の話の区切りが待てず話を遮らない
いかがであろうか。せっかくの学べる機会を喪失することは実に勿体ない。さて、
3.効く(話の効果)それは感謝の返礼です
●何のために話す
改めて、 何のために話すのか確認すると、それは、用意万端整えた暗記の内容を口から放つことではない。ましてや、「私は、話はうまいんだと」勝手な自己満足による単にかっこよく演ずる場でもない。
なぜ話すか、何のために話すか、それは、日々の活躍の中での話しは、「話し手に感謝の言葉がいずれ返ってくる、その喜びを得ること」なのである。と言うのは、自分の持ち味としての才能、知識、技術、人間味を積極的に生かして関わる人にお役に立てる事を信じて施しをするうえで、その伝える力として話すのである。ならば、伝わる課程は、
●効果を生むその伝わる課程は
*それは、話し手の話をお聞きになった人が、内容を理解され、納得され、試され、やってみたら「うまくいった」「できたのよ」との歓喜の瞬間を得られるプロセスを踏む。ですから「あの
とき教えて頂いてありがとうございます」「あのときの話が心に残って、是非自分もやってみようと試みました。これがうまくいきまして後輩が喜んでくれました」・・の言葉が感謝の言
葉として寄せられる。
*「そうですか。それは良かった」とのニコニコ顔になるのが話された人。従って、単に言葉を発するのでなく、話す人が喜びを得ることです。
このようなことは、家庭でも社会活動でも話す内容は違えども、そこには、訊かれて話せる感謝、聴いて頂く感謝、聴いていただいたことを試し、実践してくれたことの感謝。そして、感謝の言葉をいただく事は喜びである。
蓄えた宝物の施しは感謝の言葉が返礼され
「人生100年時代」最近よく聞く言葉である。ちょっと前は高齢化社会の到来とか超高齢化時代とか言われていたがいずれにしても日本人の寿命が延びて、自身を生かしてお役に立てる時間が延びたことは事実である。そこには、単に息しているだけの他人依存の時間の重ねでなく、その人だからこその自身の持ちうる能力を施し、お役に立てる機会が増えた、心豊かな人生づくりを楽しむ時代といえる。
まさに、「泣いて生まれて、笑顔で成長、決め手を施し、感謝で送られる」こんな100年といえるのではなかろうか。ちなみに、泣いて生まれてとは、「おぎゃー」と大きな泣き声でのこの世の誕生の瞬間であり、「世の中のお役に立つために誕生しました」との宣言であり、両親はじめ多くの人に喜びと歓迎されての人生のスタートである。そして、多くの方からの献身的な育成の施しを笑顔で受け入れ、心技体の成長を成してきました。その蓄えた成長の宝物が自身の現在の持ち味です。その持ち味をお役に立てる施しのお役立てには必ず、「ありがとうございました」「おかげ様で」との感謝の言葉がかけられます。あなたの活躍の喜びはここにありますね。
L社の受講者の「私の仕事は「誰でも、美しく、健康で、心豊かに人生を楽しんで欲しい。そのお役立てを成す事です。それは、積み上げてきた技術を最高に生かしての施しです。そこには、クライエントの望みを共に実現していく事です」
この想いの実現にお役立てできた「自身を生かす話す事の楽しみ方」をテーマにした今回の話し方教室であった。I社長の総括では、「私は引っ込み思案、話す事が苦手な人でした。しかし、話す事の必要性から、やむなく取り組んできました。やがて、力をつけ、トップ成績を受賞する私になりました。「皆さん、話せる力を秘めています。今後もその力を掘り起こして参りましょう。それは単なる話術でなく、お役に立てる喜びを成就する喜びをお客様から頂く、話し方です。まさに心を素直に伝える、言霊としての伝わる話し方です」と総括された。受講者各位の一段晴れやかなうなずきが嬉しい瞬間であった。文頭の感想がより「ありがとうございます」と返礼されている姿を想う昨今である。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/