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今後の世界と各国の経済成長率見通し

【真田幸光の経済、東アジア情報】
「今後の世界と各国の経済成長率見通し」

真田幸光(愛知淑徳大学教授)
 
比較的客観的、科学的中立的とされる国際機関である、経済協力開発機構(OECD)は、最新の「世界経済見通し」を発表し、2023年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を2.9%、2024年は2.7%と予測、発表している。
前回の9月予測と比較すると、2023年は0.1ポイントの下方修正、2024年は据え置かれている。

OECDは、
「世界経済は、米国の堅調さもあり予想に反して底堅さを示した。
しかし、金融引き締め、貿易の低迷、景況感・消費者信頼感の低下の影響が顕在化し、世界の経済成長率は小幅に留まる」
とした上で、
「世界の経済成長率は2024年前半までは低迷する。
その後にやっと緩やかに回復する。
そうした結果、2025年には3.0%成長に回復する」
と予測している。

更に、OECDのマティアス・コーマン事務局長は、
「世界経済は引き続き低成長とインフレ上昇という課題に直面する」
と述べ、過去2年間にわたる金融引き締めの結果として、2024年は緩やかな減速が見込まれるとコメントしている。

但し、OECD加盟国のインフレ率は、2023年の7.0%から、2024年は5.2%、2025年は3.8%と低下を続ける見通しであるとし、2025年までにはほとんどの国・地域で中央銀行のインフレ目標値に戻るであろうとも予測している。
特に原油価格を中心とした資源・エネルギー価格が落ち着いていけば、こうした見通しは更に確実なものとなるであろう。

また、2024年と2025年の世界経済の成長は前年に続き、半分以上を中国本土、インド、インドネシアなどのアジアの新興国経済の伸びに依拠する見込みであり、中国本土とグローバルサウスの一部の国の世界経済に対する影響力は増すものと、OECDが予測している点は特記しておきたい。

2024年の主要国・地域の成長率をみると、米国は金融引き締めによって内需と雇用の伸びは鈍化するとして、1.5%の予測、2025年は1.7%へと僅かに回復する見込みとしている。

ユーロ圏は、ロシアによるウクライナ侵攻やエネルギー価格高騰の影響により、まだ暫くは低成長が続く見通しとしているが、インフレ率の低下に伴う金融緩和への期待から前年の0.6%から0.9%に僅かに改善するとの見方が示された。

中国本土は、2023年は5.2%、2024年は4.7%、2025年は4.2%と、不動産分野の不調と家計貯蓄率の高止まりによって成長率は低下が続くと予測されている。

そして、日本は今年は1.7%と比較的高い成長率が予測されているが、2024年は1.0%成長、2025年が1.2%成長と相対的には低成長の見通しとなっている。

尚、OECDは、短期的な世界経済の見通しは、
「依然として、下振れリスクが高い傾向にある。
特に不確実性を高めている要因に、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃後の紛争に起因する地政学的リスクの高まりが挙げられる。
今後のエネルギー市場や主要な貿易ルートへの混乱などの影響が危惧される。

このほか、貿易面では、貿易管理規制の強化や、主要国・地域の内向きな政策、グローバルバリューチェーンの再編などが不透明な見通しを助長する。

一方、成長シナリオとしては、新型コロナウイルス禍以降に蓄積された余剰貯蓄を家計が積極的に活用することで個人消費が拡大し、成長率を押し上げる可能性がある。」
とコメントしている。

 参考にしておきたい。

「経済成長率見通し」
出所:OECD 単位:%
               2023年 2024年 2025年
世界               2.9   2.7       3.0
G20                3.1        2.8       3.0
オーストラリア  1.9         1.4       2.1
カナダ                1.2         0.8       1.9
ユーロ圏             0.6        0.9       1.5
ドイツ             △0.1        0.6       1.2
フランス             0.9        0.8       1.2
イタリア             0.7        0.7       1.2
スペイン             2.4        1.4       2.0
日本                    1.7        1.0       1.2
韓国                    1.4        2.3       2.1
メキシコ             3.4        2.5       2.0
トルコ                 4.5        2.9       3.2
英国                     0.5        0.7      1.2
米国                     2.4       1.5       1.7
ブラジル              3.0       1.8       2.0
中国本土              5.2       4.7       4.2
インド                 6.3        6.1       6.5
インドネシア      4.9        5.2       5.2
ロシア                 1.3        1.1      1.0
サウジアラビア  △0.4     3.0       4.7
南アフリカ共和国  0.7     1.0       1.2

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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