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中国本土、株式市場について(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
中国本土、株式市場について

真田幸光(愛知淑徳大学教授)

中国本土の株式市場が、長引く下落傾向から抜け出せず、過去3年間で中国本土と香港市場で失われた時価総額は6兆米ドルに達すると見られていると、米国CNNが報じている。

同紙は、この金額について、英国の年間GDP(国内総生産)の約2倍に達する規模であると説明するなど、
「中国本土経済の悪化を世界に知らしめる」
という恣意性も感じるものである。

2021年2月から下降曲線を描いている中国本土の株式市場は、新年に入り、株価が暴落した2016年以降で最悪のスタートを切ったとまで見られている。

更に、中国本土の企業が多数含まれる香港のハンセン指数も今月に入り最近まで10%下落しており、中国本土の上海総合指数も約7%、深セン成分指数も約10%、それぞれ下落したとも一月には指摘されていた。

ハンセン指数などは19年ぶりの最安値を記録し、中国本土の代表的な株価指数であるCSI300指数も5年ぶりの安値を付けたとも報告された。
 
こうした状況を受けて、有名なゴールドマン・サックスのアナリストたちは、投資レポートで、
「疑う余地もなく過去3年間は中国本土株式市場の投資家と市場参加者にとって挑戦的かつ挫折感を与える期間だった」
とまで指摘し、
「株価の下落は、不動産市場の低迷やデフレ懸念、負債問題、出生率の減少、先細りする労働人口、イデオロギーを振りかざす政府による私企業制裁と外国企業の撤退などが複合的に作用した結果である」
と、俗に言う、こき下ろしの表現をしている。

また、中国本土政府が株価を反転上昇させるほどの景気対策を打ち出さない為、SNS上では中国人投資家らの不満も爆発しているとも報道されている。

筆者は不自然なバブルを起こさぬ為の習近平政権の対応には基本的には大きな問題はない、また、投資家責任を忘れて、中国人投資家達が中国本土政府に不満を示すのもおかしいと考えているが、しかし、中国本土が揺れていることは間違いない。

中国本土版X(ツイッター)の微博(ウェイボー)には「株価急落」「中国株救済案」などが人気検索ワードに浮上してもいる。
 
民族主義傾向の強いと言われている胡錫進・元環球時報編集長さえも1月22日、微博に、
「今日の株式市場の状況は残念だ」
と書き込んでおり、こうした中に、反習近平色を滲ませ始めている。

また、中国本土政府の統計によると、中国本土の個人投資家は2億2,000万人を超え、投資家全体の99%を占めており、簡単には無視も出来なくなっている。

こうしたことから、危機感を覚え始めた中国本土政府はようやく対策に本腰を入れ始めたとは見られている。

即ち、当局が人民元を防衛する為に、国有銀行に米ドル売りを要求し、株価テコ入れの為に2兆3,000億人民元の投入を検討したとの報道も出た。

これに先立ち中国本土の李強首相は、株式市場の安定化に向けた強力かつ効果的な対策作りを注文したとも報告されている。

今後の展開を注視したい。

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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