【真田幸光の経済、東アジア情報】
北朝鮮労働者の動きについて
真田幸光(愛知淑徳大学教授)
筆者は中朝国境や中露国境、中国本土とモンゴル国境線、中国本土の朝鮮人自治区などを何回か実際に訪問した経験がある。
そうした中の一つには防川から眺める北朝鮮とロシアの国境線、豆満江の流れとその先に見える日本海と言うものもあった。
また、中朝国境の都市・丹東での企業視察や、真冬の中朝国境での凍結した鴨緑江、直ぐにも北朝鮮側に歩いて入れるほどに近づいた川の向こうに立つ、銃を抱えた北朝鮮兵士達と対面したこともある。
また、朝鮮人自治区での工場視察や、実際に北朝鮮に入っての工場見学を行った経験もある。
こうした中、最近、中国本土・吉林省和竜市の工場に派遣された北朝鮮労働者がストや暴動を起こしたと報じられたが、更に丹東でも北朝鮮労働者が騒乱を起こしたことが報告されている。
劣悪な労働環境に不満を抱いてきた北朝鮮の海外派遣労働者による相次ぐ暴動が更に本格化するとの見方も相次いでいる。
韓国政府・統一研究院は、
「丹東で働く数十人の北朝鮮労働者が故郷への帰還を求め2月中旬から出勤を拒否している。
この事態を受け北朝鮮領事が直ちに派遣され問題解決の為に動いているが、労働者らは死んでも家に帰って死にたいと強硬な態度を示していると報告している模様である」
との見方を示している。
中国本土で働く北朝鮮労働者らは新型コロナウイルス感染拡大などの影響で長い場合は7年も故郷に帰れず長期滞在が続いており、身体的・精神的な疲労が限界に達しているとの見方も出ている。
こうした見方に関して、韓国政府の情報機関である国家情報院は、
「海外派遣された北朝鮮労働者の間では劣悪な生活環境が原因で様々な事件や事故が相次いでいる。
一連の事態を鋭意注視している」
とコメントしている。
尚、現在、中国本土国内にはおよそ9万人の北朝鮮労働者が働いていると見られているが、上述したような筆者の経験、そして体感しているところでは、
「忍耐強く、指示命令系統に従う北朝鮮労働者たちがストをしていると言うことは相当過酷な状況に置かれていることを示す兆候として考えられる」
と思われる。
今後の動向をフォローしたい。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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