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緊急事態条項とワイマール憲法48条(小島正憲)

小島正憲のアジア論考

緊急事態条項とワイマール憲法48条

小島正憲((株)小島衣料オーナー)

名古屋の文化センターで、「今、改めて考える ヒトラーとナチ・ドイツ」(東京大学名誉教授石田勇治)という講座が始まった。私は、すぐに聞きに行った。なぜなら私は、長年、「あのワイマール憲法が、なぜ、ヒトラー出現を防げなかったのか」という疑問を持ち続けていたからである。

受講後、その疑問は見事に氷解した。同時に、石田教授が、「なぜ、今、ヒトラーを取り上げたのか」もわかった。下記に、それらをまとめておく。なお、引用部分(本文を含む)は石田先生のレジメとGoogle・AIからである。誤解して引用(盗用)している部分があるかもしれないが、事態の緊急性と重要性に鑑み、容赦していただきたい。

1.ワイマール憲法の抜け穴

一般に、「ドイツのワイマール憲法は、ドイツで初めて君主政を廃止し、共和政を規定した憲法であり、男女の普通選挙による議会政治、国民の直接選挙で選ばれる大統領制にくわえ、世界で最初に労働者の団結権などの社会権の保障を明記した。当時における、世界で最も民主的に進んだ憲法であった」と言われている。だが、その最も進んだ憲法から、最も野蛮なヒトラーが生み出されたのである。人類の英知を結集したワイマール憲法は、なぜ、ヒトラーの出現を防げなかったのだろうか。

結論を言えば、ヒトラーの出現を可能にしたのは、ワイマール憲法に、緊急事態条項(48条)という抜け穴があったからである。もちろんヒトラーの出現には多くの他の条件も考えられる。しかし、ヒトラーはこの緊急事態条項を道具として多用し、独裁体制を作り上げることに成功したのである。

ワイマール憲法48条

1.州が国の憲法または国の法律によって課せられた義務を履行しないとき、大統領は武装兵力を用いて義務を履行させることができる。

2.ドイツ国内において公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、またはその恐れがあるときは、大統領は公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合は武装兵力を用いて介入することができる。この目的のために大統領は一時的に114条(人身の自由)、115条(住居の不可侵)、117条(信書・郵便・電信電話の秘密)、118条(意見表明の自由)、123条(結社の自由)および153条(所有権の保障)に定められた基本権の全部または一部を停止することができる。

 発足時に少数派政権であることは、民主的憲法秩序・議会政治を廃棄しようとするヒトラーにとって問題ではなかった。重要なことは、時の大統領の信任を得て大統領緊急令を意のままに用い、すでに空洞化していた国会を利用して、国会の立法権を政府に与える授権法(全権委任法)を制定させることであった。ヒトラーは、国会議事堂炎上事件(1933年2月27日)をでっち上げ、翌日、「国民と国家を防衛するための大統領緊急令」を、ヒンデンブルグ大統領に出させた。

国民と国家を防衛するための大統領緊急令(議事堂炎上令)

共和国憲法48条2項に基づき、国家の安全を危険にさらす共産主義者による暴力行為からの防衛のため、次のことを命令する。1.憲法114条(人身の自由)、115条(住居の不可侵)、117条(信書、郵便・電信電話の秘密)、118条(意見表明の自由、123条(集会の自由)、124条(結社の自由)及び153条(所有権の保証)は、

追って通知するまで効力を停止される。

これによりドイツ全土で国民の基本権が停止。令状なしの逮捕が可能。全国各地に収容所が設置。「追って通知するまで」とあるが、その通知はなく、1945年9月に連合国が解除するまで効力を発揮した。1933年3月23日、授権法(全権委任法)が強行採決され、成立した。これによってヒトラー政府は、国会からも、大統領からも自由に法律を、しかも憲法に違反しうる法律を制定できるようになった。ワイマール憲法は公式に廃止されることはなかったが、この授権法によって事実上死文化した。

2.現国会で検討中の緊急事態条項

以下はGoogle・AIから

緊急事態条項とは、大規模災害や武力攻撃などの非常事態において、国家の存立や国民の生命を守るため、通常時の憲法秩序を一時的に停止または変更し、政府に権限を集中させる仕組み(国家緊急権)を指します。

現在、日本国憲法にはこの条項は存在しませんが、憲法改正の重要な議論テーマの一つとして国会で条文イメージ案の検討が進められています。 主な論点や議論されている内容は以下の通りです。

緊急政令の制定: 内閣が国会の事前承認を経ずに、法律と同等の効力を持つ政令を制定できるようにする権限。

国会議員の任期延長: 大規模災害などで国政選挙が困難な場合に、国会議員の任期を延長できるようにする特例。

賛否の対立: 「非常時に迅速な対応が可能になる」と賛成する意見がある一方、「政府への権限集中や人権制限の乱用につながる危険がある」と反対・慎重な意見も根強く対立しています。

戦争放棄などを謳った日本国憲法は、日本が世界に誇ることができる憲法である。そこに大きな抜け穴はない。しかし、今国会の議論は、抜け穴を作り出そうとする試みだとも考えることができる。

頑丈な堤防も、蟻の一穴から崩壊する。現国会で検討中の緊急事態条項は、ワイマール憲法48条になり得る危険性を持っている。時の権力者に、それを乱用、悪用させないために、また、日本におけるヒトラーの出現を防ぐために、今、国民は覚醒しなければならない。

 

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  小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )
1947年岐阜市生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を歴任。中国政府外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。