髭講師の研修日誌 (第127回)
上に立つ人の日頃の短い話が肝心です
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
「それではご起立ください。これから向かい合った人と挨拶を交わします。ただし、ルールを作ります。相手の名前をまず声がけします。そして「おはようございます」(初顔合わせの時は「私は田中です」と自身の名を紹介します)結びに一言の声がけです。例えば、「初めてですのでどうぞよろしくお願いいたします」。「先日はお世話になりました」「今回もよろしくお願いします」・・と相手との関わり状態に応じた感謝、ねぎらい、依頼の心を伝えます。それではどうぞ・」会場が一気に活気に包まれ、笑顔と楽しげな言葉の語調が響きます。
これは、トップ幹部の学びの機会とした柏市倫理法人会のモーニングセミナー(AM6:00~)に出講した時の場面です。学習テーマは、「短い会話で信頼を築き、相手の心を変える話し方の極意」との依頼です。
察しの通り話力向上の学びですが、単なるスピーチ上達法でなく、日頃の一言の言葉の交わし合い、会話のやりとりで深まる親和感、信用を得、この人ならば訊きたい、この人だからこそ聴くとの関係作りに着目しての学びです。それは、協力、指導の施しでも相手の言動を変えていく話し上手の前提がここにあるからです。
併せて、日常不可欠な話の現場の大半は、スピーチよりも「訊かれたことへの説明、意思表示、適切な判断に基づく指示、どうしても必要な協力要請」などの話の場対応だからです。
例えば、「この件、こうしたいと思いますがいかがでしょうか」←「それは、よき考えですね。それでいきましょう」とか「ご意見を聞きたいのですが・・」←「それについてはこうしよう。なぜなら、質も高まり、時間の効率性も良し、相手のためにも必ずお役立てできるからです。それに、あなたならできると太鼓判を押せるからです。頼みますよ」・・などに類した話が多いのです。
まさに、寄ってくる相手がいて、訊いてくれる人がいるから、話す機会が成り立つのです。時として耳にする「訊きに来ない」「相談がない」と攻める前に、当たり前の一言の無精はないか、即断即決による単純明快な応答ぶりはどうであろうか。「あの人に訊いても考えを持っていないので・・」では上長らしさの希薄さです。今回はここに着目します。まず、確認してみましょう。
◆短い話、それは一言のプレゼント・学び合いの会話です
日常の短い話の実践はひと言の施しおよび会話型話のやりとりです。その話の術を確認してみましょう。
○伝わり、相手の心を変えるは話は、内容以上に、誰が、今どのような心持ちで話しているか、それは信頼に値する人間味であるかが問われています。「宮内さんが言うなら・・・」この言葉が肝心なのです。
〇なぜなら、人は、承認欲求、認識欲求、成長欲求があります。だからこそ、日頃の一言の話が大事なのです。「がんばっているね」「だいぶうまくなりましたね」「私の期待していた通りの活躍で嬉しいね」「このやり方を工夫されたのですね」「あなたの元気な挨拶で私も元気を貰っていますよ。」「今日、お客様から褒められましたよ。若いけどキビキビして、笑顔がいいですねって。田中さん!あなたのことですね。私嬉しかった」・・・・
このように、立ち位置(上位者)の相手への理解、関心をトレンド的に成しての適宜施す一言のプレゼントは「ちゃんと観てくれている」「自分もできる人となっている」の喜びとなり信頼が深まります。もちろん、家族、近隣、お届けいただく業者さんにも・・。
◆学び合いの会話の楽しみ方
部下は十人十色です。長所もあり短所もあります。また、その人も一人十色で変わります。一人一人をどれほど知っていますか。それには、適宜、相手から学ばせて頂く話の交わし合いが大事です。それは、人間味を知り、興味を持つ話題、相手の体験による考えなどを学べます。
この学びは、話す時に生かせます。それは、部下に「私のことをわかってくれている」この親和感・信用が聴き耳を起こさせるのです。組織での話は、場面を切り取って成されるのではありません。点対応でなく日頃の学び合いによる相手に的確に対応した線対応です。
「それでは、協力を願います。これから学び合いの短い話の試しを実践します。前列の方とペアーを作ります。互いに役割を決めます。それは、訊き役と応答者です。講師から訊くテーマについて指示いたします。すかさず、訊き役の方は、応答者に問いかけてください。応答者は、単純明快に答えてください。その筋道は、
訊かれたこと(テーマ)に対して即、自身の考えをズバッと一言で答えます(主張)、そして、なぜならばと理由を説明します。そして、だからと主張点と結びつけます。
つまり、主張・根拠・理由付け、そして強調(良き点・結び)します。訊き役は、適宜合いの手で根拠ポイントを引き出していきます。短いながらもロジカルスピーキングとなります。それでは、テーマは「好きな食べ物は」・・・会場に会話の花が咲きます。応答者が一気に話すペアー、訊き役の引き出す合いの手で会話が繋がるペアー。いずれにしても無言のペアーなし。「これが良し!」でした。二回目は役どころを変え、テーマを代えての試しです。
終了時に「楽しかったですか」「初めての会話で相手のことを少し理解できましたか」「また、話したいですか」と問いました。笑顔での「はい・・」の言葉が小気味よい余韻となりました。
〇短い話でも単純明快な話し方は肝心です。それは、相手からの問い(テーマ)に対して「こう思う」と主張し、「なぜならば」と根拠・理由付け、「だからこうです」とまとめます。いわば三段階法(序論・本論・結論(結び)で構成します。
〇学び上手は話させ上手です。それは「そうですか」「素敵ですね」「なるほど」「私もできますか」・・の相づちであり、うなづきによる承認の伝えです。
そして、この聴き上手は、自身が話し手になったときには、話を聴いていただける話し手となるのです。それは、学んだことを生かした話の工夫が加わるからです。耳は二つ。口は一つ上に立つ人の人間味が生かされるのです。
◆協力を得る話にもこの短い会話が生きます
さて、上役の実績づくりは、「自らの想いを発信し、関わる人から積極的な協力を得て、目標を達成すること」です。それには、チーム力をコーディネートする力量が問われます。
協力依頼は、四方向に行います。それは、タテ方向に二方向で、下に部下、上に上司。ヨコ方向に同僚。ななめ方向には、他部署、社外の関係団体、顧客、他社の人などが入ります。ここでは、部下の協力を得る話し方に着目して観ます。
〇指示命令でなく、協力を得る話し方は“無理やりこちらの言い分を通す事ではなく、納得を創る話し方です。それには、日常の短い話による良き関係がいきた話し合い、掛け合いを重ねて、「折り合いを付ける」事です。
確認します。相手の協力を得る、それは新たな努力を願うことであり、忙しさを増すことです。ですから、「断りたいの心境」があることからのスタートです。従って、相手の心が変わり、言動が変わるプロセスは、
(1)当方の依頼・提案内容がわかる(理解する)
↓(2)なるほど、そうだと思う(納得する)
↓(3)当方の気持ちと、相手が自分もそう感じる(共感する)
↓(4)(態度変容) 協力してみよう、検討してみようとの自発意思を喚起することになります。ここに変わる伝わりの現実があります。
〇このプロセスは 知と情が絡み、どう変わってくれるかを考え、話を進めます。そこには、準備した内容をただ伝えるだけでなく,必ず相手の成長、キャリアップにお役立てる信念に基づいていることです。
ですから「あなたがだめなら他の人に・・・」等との軽んじは御法度です。「どうしてもあなたに頼む、なぜなら、この想いの実現には、あなたの専門力と人間力が不可欠だ」だとの承認欲求とリンクします。
◆はい、了解です。相手の心を変える極意
ならば、確認してきた一言の活用、交換会話、単純明快な筋道を生かした協力を得る具体的な実践の極意を記してみますと
①これまでの協力、貢献への謝意を明言しますと、←対人関係の良さ、実績の評価に安心します
②相手の考えを訊き・よく聴き、立場、現況に理解を示すと←自分は尊重されている認識欲求を刺激します
③こちらの、依頼、事情をはっきりと説明しますと←当方の一歩をも引かない意気込みを強く受け止めます
④相手の持ちうる能力に質問しながら、何ができるか気づかせ自発意見を引き出しますと←自分も協力できないか関心を高めます
⑤相手の意見とこちらの接点を見出し、手がかりを与えると、←どう協力できるか考え出します
⑥実施に向けての当方の進め方、協力による見通しを具体的に示すと←自分もやれそうだなとの気安さ、可能性を見出します
⑦期待していることを再度強めますと、←自分がしてあげねばとの責任感が芽生えます
⑧「あなたに是非お願いするとの決意の固さを言葉・態度で示すと←とりあえずできることは協力しようとの覚悟ができます
以上です。特に、「はずだ」「べきだ」「もんだ」との高圧的無精や、わかっている「ようだ」「らしい」「だろい」の消極的無精に陥らない事です。そして、
〇表現の力=わかりやすさ、正しく伝わる工夫です。具体的には、相手の理解力に適応した言葉、現物、現場の活用、適切な事例、デジタル機器の活用などをベストマッチングします。
今回は、日常の関心を持った一言のプレゼント、学び合いの会話での短い話し上手に着目して来ましたがいかがでしょうか。単なる訊く→話す←聴く→心が変わり、言動が変わる・・この上下関係が「あの人がいるから安心」「あの人と仕事をすることは嬉しい」「若いあなたと一緒に仕事できることは楽しいね」こんな言葉交わし合いになります。必然的に時に成すスピーチでも聴いていただき多数の人の心を変える機会となるのです。
モーニングセミナー受講者からの早速の確認と気づきが届く。
*挨拶に相手の名前をつけることを私は実践しています。
*まずは日頃の短い言葉のやりとりで、互いの人間味考えの傾向を知り合う。このことが無精していました。
*こちらが話を聞かせるのでなく寄ってきて訊く、それに応えて話し、聴いていいただける話のできる人となる
*職場は生身の人同士心の交わし合いだからのことに納得しました。
*相手の褒めどころに関心を持つことの大切さを再認識しました。
*会話は学び合い、この表現になるほどと思いました。
*相手の求める言葉を察してかけることの大事さ
*話し上手は聞き上手の言葉が刺さりました。自分は話すことが多過ぎです。
*話はお役に立てること。それは、話を聴いた人が従来の言動を変えることにより活躍の楽しさを作り出せるから・・との話すこの捉え方はなかった。
・・をいただきました。
小生の学びとして、さらなる話力向上の糧を頂き感謝です。再会時「あの時からこれだけ話す楽しみができました」この言葉を念じる昨今です。