新連載 「高田拓の中国内部レポート」
北京で実感した「中国の変貌」(6/8-/13)
高田 拓 (山東外国語職業学院終身名誉教授)
1、スマホでの決済は中国98%、日本6%です。
東京を訪れた中国人が「中国の3級都市より遅れている」との感想です。
(1)宿舎の近くの小さな日本食堂に行きました
客は6組程度で満席の小さな店ですが、私がいる40分の間に、宅急便の配達員がなんと15人ほど次々と訪れ、出来上がった料理を宅配していきました。
スマホを利用し、QRコードで店のメニューを調べ、ネットで注文、ネットで料金支払い、宅配で自宅に届けてもらうのです。
こんなに利用者が多いのかと驚きました(豊かになりました)。
(2)街中の大衆レストラン、スマホがないと非常に不便です
昼食は自分で料理を選び、食べるのですが、支払はすべての方がスマホです。現金では支払えない。そばの人に頼んで支払ってもらい、現金をその人に渡すしか方法がありませんでした。
*QRコードは1994年日本企業(デンソー)で開発され、無償公開されていることを中国人は知りませんでした。
2、シェアリング自転車(共享単車)が北京の街にあふれていました。
昨年来、中国の都市部で爆発的にヒットしている自転車シェアリング。
電話番号と身分証で実名登録し、「支付宝」「微信支付」などの電子マネーを利用して299元(約5000円)を専用アプリにチャージすると利用可能になる。車体に貼られたQRコードを読み込み自転車のロックを解除、任意の場所に駐輪、ロックを掛けるまで、1時間につき1元(約17円)で利用できる。
以前の地下鉄駅では小さな電動車(老人代歩)が多く見られたのですが、今ではシェアリング自転車(共享単車)の大群で、歩道が通行できないほどです。大気が綺麗になれば言うことなしです。
中国ならではの問題もあります
①「乗り捨て」が乱暴で川に捨てられたり、壊されたり、持ち去られる自転車が多い。これによる倒産企業まで出ています。
② どうしても使いたいと考える者が、自分専用に勝手に鍵を付けてしまう。
③ 各社、数十万台の自転車を投入し、競争が激化、地下鉄入口付近の歩道は自転車の山で一人しか通れない。当局が数千台の自転車を強制撤去することもあります。今後どうなっていくか注目です。投入した自転車が持ち去られ、もう数社の倒産が出ています。
ex.荒れ地に撤去、放置された自転車群、川に捨てられた自転車
*中国大手のモバイク(Mobike)が今年6月、日本の福岡で進出しました。
3、中国人は急速に豊かになっています。
ここ20年間、収入は9倍です(所得3倍増の10年間を2回繰り返している)。
富裕層は相続税、贈与税もなく、日本人より圧倒的に豊かな生活を送っています(貧富の差は拡大していますが……)。
天津の事例:
4、中国建設銀行で老人はインターネットバンキングができない。
私がインターネットバンキングを申請したら、年齢60歳以上の方は、息子の保証、承諾がないとできないと断られました。
インターネットを利用した多くの犯罪に老人が巻き込まれないように予防措置が取られていました。
昔は息子の保証人は父親でしたが、ネット社会では逆になりました。
5、空気はまだ汚染があります。
暖房時期を避け、大気のきれいな季節を選んだのですが、飛行機上空から見ると青空の下に空気の濁った汚染層がはっきりわかります。
大気汚染対策は急速に進めていますが、まだ時間がかかりそうです。
6、その他
日本の影響があるのでしょう。
町中きれいになっています。でも匂いは中国独特のにおいです。
地下鉄構内、車内はゴミも落ちてなく、非常にきれいになりました。また、乞食の姿が見られなくなりました。
抹茶製品、たこ焼き、北海道の水産物?ハローキティ・ドラえもんのコピー商品……
ネットでの購入が便利になり、実体商店がどんどん減少しています。
以前住んでいて、あれだけ賑わっていたスーパーが倒産していました。実体店舗は数をどんどん減らしていますが、レストランはおしゃれな店がどんどん増えています。面白いメニューも食べました。
実体店舗の減少、宅配業の隆盛、シェアリング自転車のすごい数……
これは、もう社会現象です。
*写真は歩道の端に20m間隔で置かれた殺鼠剤の入った陶器です。
今回初めて発見しました。
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■高田 拓氏(曲阜師範大学、斉魯工業大学客員教授、山東外国語職業学院終身名誉教授)
1967年福島大学経済学部卒業、同年4月松下電器産業(株)入社。1997年松下電器(中国)有限公司に北方地区総代表として北京勤務、 2001年華東華中地区総代表として上海勤務。2002年松下電器産業(株)退社、同年、リロ・パナソニック エクセルインターナショナル(株)顧問 2009年中国各地の大学で教鞭、2012年山東省政府より外国人専門家に対する「斉魯友誼奨」受賞。 曲阜師範大学、斉魯工業大学の客員教授、山東外国語職業学院終身名誉教授。 現在、現場での実例を中心に各団体、大学、企業のセミナー講師を務める。