真田幸光氏の経済、東アジア情報
「自社の経営資源は何か?」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
※これまでの記事は、こちら。
経営者は、自社の「理念」の徹底をしなくてはなりません。
これが、自らの存在基盤となるからです。
しかし、理念だけを追求していても経営は成り立ちません。
先ずは理念に基づいた本業によって利益を上げなくてはなりません。
その本業の利益たる営業利益は、やや粗っぽい議論をすれば、
「売上高マイナス費用」
で算出されます。
そこで、経営者は、
*売上高の極大化
*費用の極小化
を目指し、その結果として、
*営業利益の極大化
を目指すこととなります。
従って、経営者は、技術やノウハウ、のれんに代表される自社の所謂経営資源を売上高の極大化and/or費用の極小化に活かしていくことになります。
そこで、経営者は、常に、
「自社の経営資源の価値を意識した棚卸し」
の作業が必要となります。
ところで、この、
「経営資源」
なるものは基本的には、
「人セミイコール社員」
に帰属しており、そうした視点から見ると、
「新人の採用、中途採用、社内教育を必要に応じてコストを意識しながら最大限充実させる必要がある」
更に、
「アサインメントと評価の体制を確立し、社員が納得するシステムの構築を図る必要がある」
と言えます。
こうした一方、体系化、一般化が叶う仕事については極力機械化、自動化を進め、人の手から仕事を剥ぎ取り、効率的にしつつ、中長期的に見た費用の削減を図らなくてはなりません。
すると、こうした人材採用や人材教育、機械化、自動化を進めるうえでは、先ずは資金が必要となります。
その資金を確保するために、
「自社のキャッシュフロー」
を把握して、効率的ま資金運用、資金調達を実施する一方、極力、資本を充実させて経営を安定化させる為、
「資本政策」
なるものも意識しなくてはならなくなります。
そして、こうした一連の仕事を論理的、効率的に推進していく為には、情報をきちんと把握して、事に当たらなくてはなりません。
特に昨今の先行きが読みにくいご時世にあっては、
「Tail Risk」
即ち、発生する可能性は極めて低いが一度発生すると我が社に甚大なる悪影響を与えるであろうリスクに未然、未然に対応していく上からも、情報には敏感にならなくてはなりません。
こうして、足元を固めたうえで、経営者はやはり売上高の拡大を意識し、
「世の中のお役に立つものを適正価格で提供しつつ、利益の確保を図る」
ことに注力することになります。
人々が必要としているものやサービスを彼らが出しうる範囲内の価格帯で提供し、売上高の極大化を目指すしか、結局は、究極の解決策はなく、そうした視点から、自社の事業ポートフォリオを見直す必要があるのです。
この際には、我が社の提供しているものやサービスの単価を意識し、そのうえで我が社は大量生産大量販売型の規模の経済性を追うビジネスポートフォリオが中心か、少量・変量、多品種、高品質、適正利潤を追うビジネスポートフォリオが中心かを意識しつつ、見直しを図る必要があります。
こうして考えてくると、一般的には、日本には、「核心部品」「高度製造装置」「新素材」、そして、「メンテナンス」の分野に強みがあると思われ、こうした中でも特に、
「人々が生きていく為に必要な分野、即ち、間違いなく、需要がある分野」
であるところの、
「水」「食糧」「原材料」「エネルギー」
の分野に近いビジネスに焦点を当てたビジネスの推進が強みとなっていくように思います。
経営者は本当に大変です。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・東京三菱銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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