小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (21)
【中小企業の経営理念構築 全4回】
◆第1回目「経営理念とは」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■経営理念は経営者の信念である
日本において、経営理念を重要視した経営者として松下幸之助氏が挙げられる。
松下幸之助氏は、事業経営の一番根本になるのは正しい経営理念であり、経営理念とは、この会社は何のために存在しているのか、この経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行っていくのか、という点についてしっかりした基本の考え方を持つことであると説明している。
このような会社の存在理由・経営目的・経営方法についての正しい経営理念が根底にあってこそ、事業経営において大事な技術力・販売力・資金力・そして人がはじめて真に生かされてくるものだと確信していた。
■理念は最初からなくてもよい
しかし、松下氏は事業を始めた当初から明確な理念を持って仕事をしてきたわけではない。当初は商売の通年・社会の常識に従って努力していたに過ぎない。
ある時にある宗教団体本部の見学をして無償の奉仕に嬉々として汗を流す姿勢をみて、多くの悩んでいる人々を導き、安心を与え、人生を幸福にするという使命感が自分には欠けていることに気づいた。
そこで生産者の使命について考えた結果、その使命は「この世の貧しさを克服すること」である。即ち、「生活に必要な物資を豊富な水のように安く無尽蔵に提供することが必要である」と考えた。
これが松下幸之助氏の水道哲学である。
■使命感経営
形だけを見れば単に物を作っていると見えるかもしれないが、その過程には至るところに経営者の精神が生き生きと躍動している。
経営者として事業経営をうまくさせようと思うなら、まずしっかりした使命感・経営理念を持つことが先決であり、社員に対し、常にそのことを訴え続け、それを浸透させていくことが大事である。
経営理念とは、会社の上層部から現場に至るまで一人一人の血肉になり、はじめて活かされる。そのためにあらゆる機会に繰り返し、繰り返し、訴えなければいけない。
この繰り返しが使命感経営である
■家訓なくとも家族はまとまるが、理念なき会社はまとまりにくい
一般的な組織(趣味の世界、学校等)の特徴は、基本的な価値観の似ている人が集まるのでまとまりやすい。
しかし、中小企業という組織は例外である。育った環境が違う、年代が違う、何が好きか嫌いかという価値観の違う人達が偶然に同地域に住んで、通勤距離が短い等の物理的理由で一つの会社に集まり、組織を作ろうとする。
これが多くの中小企業。価値観の違う人達が集まって組織をつくるわけであるから、放りっぱなしの状態ならば確実に崩壊する。
そもそもチームとは、仕事に必要な数人が集まったから「チーム」になるわけではない。大前提として、メンバー全員がチーム一員である当事者意識を持ってうえで、チームの共通の目的、達成する目標、それに向かうためのプロセスを共有する集合体がチームであり、チームワークを強化していくには、共同で何かをする前にチームづくりを行わなければならない。
つまり、会社は「何もしなければうまく回らないこと」を前提にチームづくりを行う発想が必要となり、その対策が下記の「集団統一の原則」。
経営理念は木の根っこの役割でこれがしっかりしていないと木は成長しない。仮に大きな木の幹・葉をつけていても根っこが腐り始めると木は倒れる。つまり、経営理念が立派でも実際の経営をでたらめにやると目に見える部分の成果は上がらない。
正しい経営理念を持つと同時にそれに基づく具体的なビジョン・方針・商材戦略・戦術・戦闘が環境に適合していないといけない。
■経営理念の種類
多数の会社の経営理念を観ると複数の要素から構成されていることが多い。
①社是・社訓 ②社是・経営理念 ③経営理念・経営方針・行動指針 ④企業目標・事業領域・行動指針であり、これを整理すると、
①会社の使命や存在意義について考え方の基準となる経営理念
②トップから一般社員の行動を指示する行動の価値判断基準が並べられた行動指針
となり、この2種類の大別で経営理念を構築すると実践的である。
■経営理念の効果
次回は、経営理念を作るための4つのエッセンスをご紹介します。
(次回に続く)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
筆者 小池浩二氏が
【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
YouTubeで説明しています
是非、ご覧ください
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~