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【明日の種づくり 全4回」 第1回目「事業・製品のライフサイクル」

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (26)
【明日の種づくり 全4回」
第1回目「事業・製品のライフサイクル」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■事業や商品も衰退していく

事業や商品にも、人間と同じように「寿命」がある。

事業・製品のライフサイクルとは事業・商品が開発・展開されて消えていくまでの期間であり、導入期→成長期→成長成熟期→成熟期→衰退期で表される。

事業を例にとれば、導入期=AI事業、成長期=介護ビジネス、成長成熟期=葬儀業界、成熟期=コンビニ、衰退期=呉服小売。

衰退期の業種だからダメということではなく、それぞれのステージで自社に勝ち目があるかを分析することが重要だ。

商品も同様で、画期的な商品、高品質な製品をつくり出しても、いずれ売れなくなるときが来る。より高品質な商品や安価な商品が出たり、代替品にとって代わられたりするだけでなく、ニーズそのものがなくなる可能性もある。

最近では消費構造が変化し、商品のライフサイクルが短期化している。年代ごとに売れなくなった理由をみると、「ライフスタイルの変化でニーズがなくなった」「低価格品の出現」「代替品が現れた」という理由が多いが、近年は「低価格品が現れた」の割合が上昇している。

会社の柱となる事業・商品を開拓・開発しても、それが受け入れられる期間は短くなっている。以前にも増して、先を見据えた製品開発活動を行わなければならない環境にある。

だから、自社の強みや弱みを判断する場合には、事業・商品がライフサイクルのどの段階にあるのかをよく認識しておくことが必要で、その対策をたてておくことが、「明日の種」づくりにつながる。

それぞれの段階の特徴と対策を以下にまとめるので、参考にしていただきたい。

■導入期
この期の特徴は
〇新しい商品が展開され、その価値や効用が顧客に認知されてくる段階 
〇競合企業・商品が少なく、競争以上に市場拡大効果がある
〇価格は高いが、顧客が少なく売上高が少ない
〇この時期には、シェア拡大と将来の競合対策を準備しておく必要がある

導入期では、絶対的な優位性を確保する展開が求められ、開発がテーマになるが、その展開ポイントは以下の通り。
〇流通チャネルの構築
〇消費者にとっての利点・特徴が強調できるように販促の整備
〇製品改良を行っておく

■成長期
この期の特徴は
〇商品が市場に出回り、顧客増加と同時に新規参入が増え、激しい競争となる
〇価格は低下し始めるが、売上高増加で利益が出る
〇「事業そのもの・商品サービス」がマーケットに普及している
〇シェアは低くても展開次第で向上する可能性がある事業

成長期では、発展拡大を図る事業で現業の応用・発展させる展開が求められ、その展開ポイントは以下の通り。
〇現在の事業ノウハウを活かして新しい事業展開を創る
〇現業の周辺にこれから伸びる商品・サービスを探す
〇現有の人・設備・ノウハウを如何に活用していくか
〇現在の販売チャネル・顧客層をどのように活用するか

■成長成熟期
この期の特徴は
〇成長市場でありながら、成熟化の要素を求められるビジネス

〇従来からある業界慣習の見直しや組み直しをベースにした技術ノウハウが求められる
〇「社会構造変化」に伴い、付加価値が取れる分野が重要

成長成熟期では、技術・ノウハウをベースにコンセプトマーケテイングを明確に打ち出していく展開が求められ、その展開ポイントは以下の通り。
〇ターゲットマーケットを選んでいく
〇手の込んだサービスの特徴を出していく
〇生産性向上を常に模索する
〇関連新製品・新製品の開発を急ぐ

■成熟期
この期の特徴は
〇製品が行きわたり、買替需要を狙って価格面や販促での競争が激しくなり、利益率が低下する。

〇新しい用途を開発したり、新市場の開拓や製品のリニューアルが必要な時期
〇「事業・商品サービス」が成熟期にあるため、将来の成長は薄い       
〇高いシェアを占めていることが重要なポイントになる

成熟期では現業の継続のために、付加価値をベースにした競争力が求められ、その展開ポイントは以下の通り。
〇現在の事業の効率化による変化への対応
〇市場での競争力を強化する
〇生産性向上を常に模索する
〇関連新製品・新製品の開発を急ぐ

■衰退期
この期の特徴は
〇市場が完全な飽和状態となり、だんだん衰退していく段階
〇通常、衰退したあとまた上昇するということはあり得ない。
〇「事業そのもの・商品サービス」が衰退期で将来性が乏しい
〇お荷物になると判断される事業で他の事業の開発もしくは「残り福来る戦略」が必要

衰退期では、縮小・撤退する事業で現業からの撤退を前提とする展開が求められ、その展開ポイントは以下の通り。
〇現在の事業とは異なる新事業を創る
〇自社の固有技術を成長産業分野・市場へ活かす方策を探る
〇衰退期といってもその商品・サービスが完全になくなるわけではないので、手のかかる部分は残すことを前提に継続可能の道を模索する。

■産業は衰退しても会社は成長できる
商品や事業は、このように導入から衰退までの道筋をたどる。もっとも衰退期といってもその商品・サービスが完全になくなるわけではない。

衰退産業として「クリーニング業」がある。その背景には、人口減少による利用者の減少、カジュアル衣料の普及による利用回数の減少、後継者の不足。商品単価の低単価化などがあるが、このような環境にあっても、成長し続けている企業はある。
 
成長しているクリーニング業A社の社長は、衰退産業を「ごく一部の企業が圧倒的に勝ち、大半の企業がなくなってしまう業界」であると考えている。A社はこの考え通りに、10年で市場規模が4割縮小、13年連続前年比減という厳しい業界のなかで、5年連続売上前年比110%を達成している。

需要量そのものの増加は望めない市場でも、ニーズの変化を的確につかみ、満足度を上げられる企業は成長できることを示している。

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筆者 小池浩二氏が
  【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
      YouTubeで説明しています

      http://www.m-a-n.biz/3-3.html 

         是非、ご覧ください
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