小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (31)
【会社の成長軌道 年商10億・30億・50億の壁を突破する方法 全4回】
第2回目「年商10億を突破させる方法」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■社長が現場から離れるときがターニングポイント
創業した社長が、必死に生き抜き、豊かな明日を信じ、夢を追いかけ、ふと気がつくと、年商は7-8億になっていた。
この段階までは、経営者の背中を中心とした一体感で成長してきている。そして、業績のベースができつつある。
この時点での最大特徴は、社長が現場から離れるターニングポイントに尽きる。つまり、経営者自身が販売や製造の親分から脱皮し、経営者の仕事へ挑戦し始める時期でもある。
このターニングポイントが社内に変化をもたらし、その変化に対応できないから10億の壁を突破できない。
■10億未満企業の特徴
年商10億未満の会社運営は、ガンバリズム体質がベースである。
多くの社長は、ワンマンコントロールで企業運営を図っているが、そのままでは10億を突破することは難しい。
なぜならば、この規模の企業には突破できない特徴があるからだ。
その特徴とは、
◎ 経営スタイルは社長こけたら皆こける状態
◎ 社長の背中を見ながらの一体感が強く、風土としては良い状態が多い
◎ 個人商店の集合体組織で、組織で仕事をする習性ややり方を知らない
◎ 販売や製造の親分が社内で幅を利かす風土があり、改革策に抵抗しがち
◎ 社員は社長に認められることに目がいきがちで、組織を運営する意識が乏しい
◎ 会社内のルール・基準がない思いつきの経営なので、管理がやりづらい
◎ 顧客に合わせた商品のために、ロスが多く、陳腐化した商品が多い。
◎ 成長著しい企業は、人の成長が会社の成長スピードに対して圧倒的に遅れている
◎ 幹部クラスは1人三役・四役当たり前で、やりっ放しの体質をもっている
◎ 人・設備の増加と共に、固定費の増大による利益率の低下現象
◎ 人を動かす戦術ができないのに、新人が増加するから、随所にムダが目立つ
◎ 仕事は増えるが、新人育成ができないので、幹部に仕事が集中し余計に忙しくなる
◎ 決まったことを守らない社員数が増え、クレーム等の発生数が増加
◎ 資金需要の金額が大きくなり、その対応に困る
社長は、本来の経営者の仕事にチャレンジしようとするが、社内の現実に目を向けると、自分のビジョンとベテラン幹部の能力に問題意識を持ち始める。色々と対策を講じるが、うまくいかないジレンマで経営者はイライラした気分になる。
つまり、会社らしい会社を作りたい経営者とそれに対応できない幹部陣やうまくできない社内の仕組み、戦略等が10億の壁を阻むのである。
■組織の特徴
会社の成長に伴い問題となるのが、組織の機能であり、それを形にする組織形態である。
中小企業は片肺企業である。本来、会社を運営するために必要な機能を強引に短縮したり、削除しながら機能させているからだ。
勿論そこには人が、能力的、数的にも不足するから兼任主義にならざるを得ない状況がある。
中小企業の基本機能は
① 全体調整機能(社長)
② 販売機能
③ 生産機能
④ 財務機能
である。
最もシンプル、かつ最低必要な機能を集めた単純な組織形態である。
指揮官(社長)がいて、戦車部隊(営業機能)と武器づくり部隊(製造機能)があり、兵糧米づくり部隊(財務機能)があれば戦闘はできる。
この組織形態で年商30億までは大丈夫である。
組織スタイルは、典型的なライン&スタッフ組織であり、稼ぐ部門とそうでない部門とが大きく2つに分かれている。
■年商10億円の規模を突破できない企業でよく発生する問題点
① 人・設備の増加と共に、固定費の増大による利益率の低下
② 人の動かす戦術ができておらず、会社の随所にムダが目につくようになる
③ 赤字社員が増加する
④ 基本動作、決まったことを守らない社員数が増え、クレーム等の発生数が増加する
⑤ 資金需要の金額が大きくなり、その対応に困る
⑥ 自分のビジョンとベテラン幹部の能力に問題意識を持ち始め、対策を講じようとするが、ジレンマで経営者はイライラした気分になる
■10億の壁を突破できない企業の実例
《1.25人規模の【社長が歩くルールブック型経営】の事例A社》
(1)会社概要
① 昭和45年創業の事例A社は平成8年からの3年間で年商が3.5億、5億、8億と急成長した生産財機器を受注生産しているメーカー
② 経営者は創業者で典型的な技術屋社長である。この事例A社は社長絶対依存主義で社長こけたら皆こける状態であった。
③ 古くから社長と共に頑張ってきた主な幹部クラスは社長との一体感が強く、風土としては良い状態である。
④ しかし人を動かす方策の誰もがわかるような会社内のルール・基準がなく成長したので、以下の問題点が噴出していた。
《突破できずに苦しんでいた現象①》 ( )数値は全国平均
● 経営方針が明確とする社員23%(34%)、わからないとする社員77%(66%)と多い
方針・計画を明確にしたいと考えても、その方法がわからなかったり、明確にしても習慣づけで躓いたりして、うまくいかないから途中で止めてしまうことも多い。この会社もこの繰り返しであった。
《突破できずに苦しんでいた現象②》
● 社内の規律が守られていないとする社員が81%(74%)と多い
● 組織や命令系統は乱れているとする社員が54%(26%)と多い
● 責任の所在がハッキリしないとする社員が93%(67%)と多い
● 上司の指示が不適切であるとする社員が72%(60%)と多い
● 計画の変更が多いとする社員が60%(35%)と多い
幹部クラスのマネージメントが混乱している様子が伺える。
この規模は部門ごとに「長」は立てられるが、現場の実務を指揮する監督者が不足する。この事例A社も50%の社員が不足としている。現場の実務を指揮する機能がないとどうしても現場は混乱する。
《突破できずに苦しんでいた現象③》
● 教育訓練はしないとする社員が95%(24%)と多い
● 退職者が多いとする社員が75%(19%)と多い
● 監督者が不足しているとする社員が50%(16%)と多い
現場が混乱し、退職者が多くなる。足りないから募集するが、同じことの繰り返しで退職者が増発する。
つまり、業務手順・レベル基準がないために仕事の標準がない。
仕事の標準がないと新人を教えることが難しくなる。そして忙しいと「自分で覚えろ」と突き放すために悪循環になる。この会社もやはり退職者が多かった。
売上高・従業員数が伸びて、それに見合う組織体制・機能が未発達の場合は利益率、1人当りの生産性、資金の回転性がアンバランス状態となる。
この事例A社も成長前と成長後を比較すると成長性の経営数値は良くなっていたが、収益性・回転性・安全性・生産性は悪化していた。年商5億ぐらいで従業員規模20人未満の会社はガンバリズム体質がベースの運営である。
この規模では価値判断基準を明確にし、人が動きやすい環境を創ることが必要になる。
■10億の壁を突破する方法
10億の壁を突破できない企業の実例
◆経営態のスタイル
① 経営者は3年後を考え、経営構造改革に取り組む
② 寄集めで企業風土・組織は未形成なので、社長の価値観を植え付ける
③ 小回りをきかす
④ 自社を適合させ、戦う場所を明確にする
⑤ 商品、サービスの独自性を売る
⑥ 経営理念、ビジョン、方針、目標を明確にする
⑦ 経営者、同族一族、役員の公私の区別をつける
⑧ 基本動作、決まったことを守る実践力を重要視する
◆経営技術
① 公開経営(考え方・数値)を導入する
② 全社員参画型の経営計画書を作成・運営する
③ 業績検討のシステムを導入する
④ 月次決算を締め後、15日以内にする
⑤ 信賞必罰制度を明確にする
⑥ 経営者と社員の風通しを良くするシステムを入れる
⑦ 幹部会議、部内会議の検討機関を確立させる
⑧ 業績進捗状況の確認と月単位の業績を全員に意識させる
◆人財
① 全社共通目標に対する階層別役割・推進事項を明確にする
② 人材の高齢化が進み、活力が萎えるで、若手登用する
③ シンプルな人材採用・育成のシステムをつくる
④ 頑張る方向性を明示し、現場を迷わさないようにする
⑤ 評価制度等の公平性を重視した賃金制度をスタート
⑥ プレイングマネージャーの戦術パターンを型決めする
⑦ 部門固有の基本動作を決め、徹底させる
⑧ 働かされている感覚の社員をなくす
◆商品・顧客
① 従来の主力商品群に第二、第三の柱が必要
② テリトリーの広域化・多面的展開を図る
③ 新商品提案能力と新規得意先開拓力が無いと伸びない
④ 定番商品・重点顧客のベースを上げる
⑤ 狙うべきターゲットと対応させる商品・サービス特徴の明確化
⑥ 商品・顧客毎の採算チェックし、赤字対象はカットする
⑦ 小まわりをきかしてのサービス機能を拡充させる
⑧ 高品質で手の込んだサービスで戦う
◆財務・経理
① 会社の財産と個人の財産を明確に区分。
② 資金繰りを立て、資金繰り予実績管理を行う。
③ 月次決算を行い、計数面での問題点を分析する。
④ 金融機関の開拓を行う(都市銀・政府系・地銀・信金)
⑤ 売掛金回収意識を強化させる
⑥ 会社は資金がなければ潰れることを意識させる
⑦ 年間の資金繰り計画を作成し、金融機関対応を図る
⑧ 小さい間接部門をつくる
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筆者 小池浩二氏が【10億までの成長軌道】を動画で説明しています。
こちらからどうぞ → http://bit.ly/2ua8b2P
また、【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。
こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm
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