【特別リポート】
「平成31年 元旦の靖国神社」
日比 恆明氏(弁理士)
皆様、明けましてお目出とう御座います。
昨年の国内での大きな出来事は、何といっても多発した自然災害でした。
6月には大阪で、9月には北海道で地震が発生しました。被害は比較的小さかったのですが、この規模の地震が関東地域で発生したとしたら、大惨事になったのではないでしょうか。
続いて、7月には西日本で集中豪雨が発生し、岡山県、広島県では多数の家屋に被害を受けています。さらに、9月になると大型の台風21号が近畿地方を襲い、関西空港などのインフラに大きな影響を与えています。このように連続して災害が発生すると、近いうちに発生すると予想されている中南海大震災が確実なものと思われてきます。
また、昨夏は異常に気温が上昇し、全国的に高温となり、熊谷市では41度を記録しました。その原因は、二酸化炭素の放出による地球温暖化によるものかは不明ですが、世界的に気温が上昇していているようです。小学校の教科書には、「日本は温帯地域である」と記載されていますが、その内に「日本は亜熱帯地域である」と書き換えられるかもしれません。
世界の大きな出来事は、トランプ大統領による米中貿易戦争の開始でしょう。米国が、中国製品の輸入に対して高率の税金を課すということです。その根本的な理由は、貿易不均衡による貿易赤字が大きく、その解消のために差額を税金で回収する、というものです。
貿易摩擦は以前から米国内でブスブスと問題になっていたのですが、トランプ大統領が強権をもって実行しました。両国とも世界の強国と自負していることから、面子があって簡単には折り合うことはないでしょう。
トランプ大統領の任期はあと2年残ってます。もし再選されたとなれば、任期は6年となります。トランプが大統領の席についている間は貿易戦争は続くでしょう。もしかしたら10年は続くのではないかと予想されます。
その理由としては、日本の自動車メーカー、電気メーカーなどが米国内に工場を新設していることです。工場を稼働させるために、数百億円の投資をしている企業もあります。巨額の投資をしているのは、各企業は米中の貿易戦争は短期では終了しない、と判断したのでしょう。今年は中国の工場が他国に移動し、世界的に大きな産業の変化があると予想されます。
写真1
写真2
今年の元旦は一日中快晴でした。午前9時の気温は3度のため、日陰を歩くと冷たく感じられるのですが、日向ではポカポカと暖かい天気でした。風が弱いため、真冬とは思われない穏やかな日となりました。
写真1は、午前9時半頃に拝殿の方向を撮影したものです。何時もと変わらない光景です。数年前と変わったといえば、石畳の左右に設置されていたお守り・御神籤などを販売する仮設の売店(神札所と言う)が無くなったことです。石畳の左右がスッキリとし、解放感があります。写真2は、大村益次郎像から神門の方向を撮影したものです。この光景も何時もと変わりません。
考えてみると、神社仏閣を始めとして教会、モスクなどの宗教施設は永続性が求められるようです。数百年、数千年もの間、同じ形態を維持しているのです。建物を毎年のように改良したり、変更するのはご法度なのです。奈良の薬師寺、興福寺などの建物の復興では、数百年前とほぼ同じ姿に再建しています。伝統を重んじるという理由もあるのですが、その昔にその神社仏閣に葬られた霊魂が戻ってくる時に迷わないように配慮しているのかも知れません。ただ、キリスト教の教会は、新規に建立する際には比較的モダンなデザインで設計している傾向にあります。これは宗教観の相違からくるものかもしれません。
写真3
靖国神社の大きな変化は、第一鳥居から第二鳥居までの間の参道両側の整備があります。神社創立150年を記念として、2年前から境内で大規模な整備が続いています。参道脇の庭園の整備はほぼ完了し、次は建物の整備に入っています。
写真3は新設された東屋(あずまや)で、同じデザインの東屋が駐車場入口付近にもう一棟新設されてました。急な雨水を避けたり、夏の強い日差しを逃れるために設けられたのでしょう。今まで、参道脇には参拝者が一時的に雨や日光から保護する建物はなく、不便でした。これからは高齢者にとって便利となるでしょう。
写真4
写真5
参道脇の大きな整備には、休息所(第一休息所)の建て直しがあります。写真5は昨年の元旦の時の休息所で、ここにはみやげ物店や食堂、便所などの建物がありました。これらの建物や一部の樹木は全て撤去され、写真4にあるように更地となっていました。これから工事が始まり、来年5月に新規の休息所が竣工するそうです。
そもそも、写真5にある旧休息所は木造で、篤志家により寄贈されたものでした。元々は無料の休息所だったのですが、ある親分が運営の権利をもらい、そのままみやげ物店と食堂の経営を続けていた、との噂です。今回の改築ではどのような休息所になるかは不明ですが、かなり近代化されるのではないかと期待しています。
写真6
写真7
休息所から追い出されたみやげ物の業者はどうなったか、というと、写真6にあるように、参道脇にコンテナーハウスを設置して、仮設のみやげ物店を運営していました。今までの利権があるため、改築されるまではここで一時的に営業を続けることになったようです。
さて、駐車場の奥には別の休息所(第二休息所)があります。この休息所がどのような経緯で建設されたのかは不明ですが、ここでは複数のみやげ物店が参拝記念の品を販売しています。以前はこちらでも食堂があったのですが、現在は廃業し、みやげ物店のみが営業しています。神社側としては食堂などの運営にはあまり良い感情を持っていないようで、食堂の業者には撤退してもらったのではないかと推測されます。
この休息所で営業しているみやげ物業者も改築される新しい休息所に吸収し、今ある休息所は取り壊して駐車場に変更するのではないかと推測されました。時代の変遷により、境内で営業している業者も変化させていくようです。
写真8
靖国神社も神社であることから、参拝者には絵馬を頒布しています。絵馬には願い事を書いて吊り下げられるのですが、通常のベース盤をした絵馬の他に桜の花をかたどった絵馬もありました。以前から頒布していたようですが、全国的にも珍しいデザインではないかと思われます。
写真9
正月三が日には、境内のあちこちの樹木の回りには縄が渡されて、みくじ掛けが用意されてました。朝には縄だけであったのが、2時間もすると無数のおみくじが結ばれて、さながら雪の壁のようになっていました。しかし、結び方が弱かったためか、地面には縄から落ちたおみくじが散乱していました。おみくじを結ぶのは、「縁を結ぶ」という意味があります。落ちないようにしっかり結んで欲しいものです。
写真10
写真11
大村益次郎像の周囲には、何やらテントが並んでいました。円弧を描くように、二列に渡ってテントが設置され、テントとテントの列の間には無数のテーブルと椅子が並べられていて、フードコートとなっていました。各テントには飲食の屋台が開業しており、両側にある屋台から料理を受け取り、テーブルで食事することができるように配置されてました。
以前のように大小のテントが雑然と並んでいるのではなく、各テントの幅はほぼ同じ大きさに統一されて整然としていました。このフードコート形式の屋台の出店は、すでに明治神宮で実施されていて、靖国神社が最初ではありません。どこの神社にも祭があると屋台が開店しますが、その運営形態は徐々に変化しているようです。
写真12
正月の屋台で必ず販売されているのがその年の暦です。運勢の占いと共に日の出、日の入り、各種行事の案内が記載されていて、農耕が主体であった昔は農家にとって必需品でした。戦前は、農家、商家には必ずといっていいほど備えられていたそうです。しかし、現在は需要が減り、以前は3社あった暦出版社は撤退し、東京神宮館の1社に集約されているようです。
写真13
この日、神社付近で見かけた変な人です。車を参道入口前に駐車し、社内から衣類、書籍、雑貨を並べ始めました。なにやらブツブツと言いながら、並べた衣類などに水を掛けていました。どうも、どこかで入手した聖水を身の回り品に振りかけ、穢れを祓っているようでした。今年初めて見かけましたが、毎年同じ行動をしているのかは不明です。
写真14
この写真は、神社近くに設置された千代田区の地域案内図です。この地図を良く観察したところ、靖国神社はキリスト教の教会に囲まれていることが判りました。北側には白百合学園を運営するシャトル聖パウロ会、九段教会、シャミナード修道院、富士見町教会、東京ルーテル教団が、南側にはメリノール宣教会、イエスズ会修道院が、南西側には聖イグナチオ教会が、東側にはニコライ堂、神田キリスト教会、ハリストス正教会があります。靖国神社を取り囲むように、外国の宗教団体が軒を連ねているのです。
そもそも、千代田区には神社仏閣が極端に少ない地域なのです。神社は、日枝神社、東京大神宮、神田神社、平河天満宮、築土神社、三崎稲荷神社、柳森神社しかありません。寺院はさらに少なく、千代田寺、神田寺、心法寺しかありません。その他に小さな仏教寺院はあるのですが、道場や祠のようなものです。どのような理由で神社仏閣が少なく、キリスト教関係の教会が多いのかは不明です。
写真15
写真16
写真17
飯田橋駅近くには東京大神宮があり、縁結びで有名になったため多数の参拝者で賑わっていました。しかし、参拝者には、縁結びをしたい若者よりも中高年の人達の方が目立っていましたが。この東京大神宮には参道はなく、参拝者は門前の区道で順番を待っていました。参拝者の列は、区道に沿って200mほどの長さになっていました。
なお、靖国神社前の歩道には、写真17のように東京大神宮への案内をする看板が建てられていました。靖国神社での参拝が終わった人達を近くにある東京大神宮に誘導するためです。どの神社も参拝者を獲得するために必死なのです。
写真18
正月は多くの企業、商店が休日となるのですが、休んでおれない人達も多いのです。来月から始まる大学入試に備えた受験生にとっては正月休みもありません。この日、ある予備校では模擬試験を実施していて、飯田橋駅付近では会場への案内をしていました。
以前から疑問に思っていたのですが、日本は正月三が日を一斉に休日としているのですが、外国では正月の一日だけが休日で、2日からはほぼ通常の業務をしています。国際化が進んでいるのですから、日本は三日間も休む必要はないでしょう。こんなに休日が長引くと世界との競争に遅れてしまうのでは、と危惧しています。