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「華やかに花を咲かせる双方の楽しみ方」(澤田良雄)

鬚講師の研修日誌(48)
「華やかに花を咲かせる双方の楽しみ方」

澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役) 

◆新人の活躍の極意
 
平成最後の新入社員・令和最初の新入社員の第一歩がスタートした。それぞれの想いの花を見事に咲かせていただきたいと、新人側に、そして育む側に支援の日々である。

新人研修研修の冒頭でまず「注目の中で、フレッシュさが生きた”華”となる」と説く。
”華”とは新人だからこそ発揮できる魅力の凄さだ。

それは、就活で選ばれた入社の覚悟から発するハツラツさ、活き活きさ、学ぶ力の実践力だ。そこには「よろしくご指導下さい」との素直さ、謙虚さを感じさせる。だから、動きにもスピード感あり、さわやかな声の響きのオーラである。 

この華やかさは、迎える側の注目する人物像との合致といえる。そこからは先輩からの関わりが期待できるし、反面、先輩が初心に立ち返る機会となり、日頃の言動力を改善させるほどの影響力をためす。それだけ、職場に新入社員が入ることは多くの価値がある訳だ。

従って研修時の出だしは、このことの確認の支援である。だからこそ、出講した際、会場入口での受講者との行き交いでの挨拶、歩き方を観察し、「起立、礼」「お願いします」の号令での言動にも注力する。

「入り口での先に声かけあなたOK」「大きな号令をかけたあなたの名は」「Yです」「それでは皆でYさんに拍手」。
「立ち姿には、背筋がきっちとしている人、多少の曲がりの人、足元の開きでも揃っている人、開き加減の人」「お辞儀でも善し悪しの状態があります」とチェックし、現実の診断を促す。

「新人は何もできないわけでない、今できることの最高を実践せよ」と大きな声でぴしっと決め、心機一転を図る。それは、今年の就活での売り込みは「成長していける」「仕事を通じて社会に役立つ」「楽しく、無理ない勤務条件」などだが、入社して間もないにもかかわらず、きちんとした言動が時が過ぎたら最高実践されていない現実に鳴らす警鐘である。

できる力が既にあるのに自分を粗末にするのは実にもったいない。フッレシュさ溢れる魅せる華やかさは、新入社員ならではの魅力である。だからこそ、今できることの最高実践を重ねて確実に成長して行く楽しみを、学生意識を脱皮し、心の持ちようを就活で売り込んだ自分像を確実に実像化する覚悟とし、言動を変える試み、実践を重ねて、自然体で挙動できる成長ぶりを楽しんで行くことだ。

楽しみ方の「新人活躍の極意」は次の9ポイントを確認している。

①注目の中で新人としての華となる
(華とはイキイキ、挨拶、笑顔、熱心さ、一生懸命、学ぶ意欲そして素直な人物)
②今できることの最高実践を重ねること
(「あのときにやっておけばよかった」の悔いは、絶対につくらない)
③基本能力は徹底的にモノにする、 それは100点満点なり
(プロも元はアマだった。それは基本の完全マスターの専念から……)
④プロとは、さすがの能力→を生かして成果を上げ→金を獲る人
(能力は人材、成果は実績、その評価によって金は決まる)
⑤仕事は選べない、ならば適性はつくるモノ
(向いている、いないではなく、モノにする挑みが、やがて適性をつくる)
⑥人は選べない、ならば苦手な人こそ、こちらから心を開く
(単なる印象での好き嫌いは御法度。異なった持ち味の人だからこそ学べる)
⑦解らなかったら訊く、困ったら相談する、その素直さが不安無し、ミス無しの極意なり
(見栄をはる、未熟なことの自覚無しは、ミスを生む、ストレスを抱えるもと)
⑧叱ってくれる人に感謝、本気で育成してくれる師匠である
(指導事ができれば褒め、駄目なら期待を込めてびっしと叱る。愛情ある指導の鉄則)
⑨マナー知らずは嫌われる、ビジネスにはネックである
(先輩、上役、お客様を敬う心が、言葉、振る舞い、表情の品格をつくる)

である。その実践は「その気になれるか」その気になれば本気度が高まり、やる気、元気が沸き上がり、根気よく継続することでの新人としての人気を得ることができる。

その気になるその前提はどんなことか次に確認してみよう。

◆想いを実像カする第一歩は企業人に脱皮
 
その源は、就活で最終的に決断したそのことである。それは「なぜ当社に決めたか」「将来どういう自分になりたい、そのために選んだ最適な成長の舞台」としての誇りである。単に働きやすい、給料が良い、通勤しやすいというのでなく、自己能力を生かし、より高めて実現する自分の思いの強さだ。それは職業観であり、自身の生き方と言える。当社を選び、入社した初心はそこにある。

I商工会議所の新人研修の受講者の作文で、
「私はウェディングプランナーとして幸せのお手伝いをする。ホテルの最高の良さを生かし演出して、新郎新婦様の喜びを創ることと臨席者からのオファーが得られる活躍をします」
「保育士としてアルバイトで体験を重ねて来た。正式な保育士として、保護者にまた園に貢献できる人になります」
「不動産の仕ことです。高価な買い物をお手伝いしますので、安心と長い信頼を創って行きます。」
「特種車の設計をする仕ことです。自分の設計した放送車が走るのを観ることにします」
「私は環境業、ゴミに関して日本一の識者となります」

帰路語りあった高卒社員のYさんは、「環境の企業です。私は燃やすエネルギーで電気を起こす設備を考え、外国で役立つ仕事がしたいんです」と熱く語った。夢、想い、希望を描くことからどう実現するかのスタートだ。

確認しよう。学生から社会人、そして選んだ企業に入社することは企業人となることである。企業には歴史があり、理念があり、戦略があり、独特のルールもある。素直に理解、納得し、実践することだ。たとえ違和感があってもなりきる覚悟が必要だ。

「あそこの会社は良いな」「当社は云々」という評論は学生気分そのものだ。胸張って「当社はこのようにすばらしい……」と言い切る人が、自身が選んだ企業人である。
 
令和の時代、諸処の想いの解説があった。一人ひとりが立派な花を咲かせて下さい。できればオンリーワンの花を咲かせて下さい。その花の根は企業人になることである。だからこそ、評論家から入社した実務者としての活躍を楽しむ事だ。 

そして、芽を出し、茎を創り、枝を張っていく成長の楽しみを創る実践はどうする?
それは以下の通りだ。

① 専門基本力を100点満点でできる信用を創る
 
「早く一人前になる」–新人の目指す第一歩の自画像である。
一人前の条件の一つは専門力を早く身につけること。それは守(基本)を100点満点で仕事を成す信用を得ることだ。
その心意気は専門力の基本を速くものにする。それは、企業・組織・制度・製品・業務遂行知識、技術・技能の早期修得の取組みである。

企業は今や厳しい競争関係にある。どうお客様に選ばれ続けるかだ。
前記の作文例でも確認したように、自身もその一役を担う一人となったとの心意気が良い。ならば、安心、信頼される仕事ができる社員に早く成長することを楽しむことである。

② 未熟さを解決する育てられ上手・学び上手の心得
 
育てられ上手、学び上手は未熟な自分を素直に認めることである。当初のミスは学びを本気にするし、次へのどうしたらうまくいくか、知恵を生み出す機会でもある。
なのに「でも、だって」の言い訳をしたり、ましてや「ちゃんと言ってくれないから、こうなったんです」と責任転嫁することは避けたい。

自意識の高さはこれまでの経験を裏付けするのは良いが、新たなことへの体験は思い通りいかないものだ。自分なりに一生懸命やっているといっても、上司、お客様の期待に応えた言動でない限り信用できる働きでない。「失敗を素直に認め、どうしたら二度としないですみますか」と教えを仰いでくる可愛い新人だからこそ、多忙な中でも指導時間を創出し、丁寧な指導を施していただける。
更には「本気で叱ってもいただける」–叱ることを躊躇する指導者にはそれだけ、叱りにくさを与えている新人だからである。

③ 適性は造るものと覚悟する

イチロー氏の引退場面には画面を通じてだが感動した。「こんな場面を魅せられたら悔いなどありません」との会見での回答にはさらに感銘もした。
イチロー氏は天才といわれるがそれは持って生まれた天才ででなく努力の天才であろう。でなかければ大リーガーの舞台で実績は残せまい。あるレベルでの競い合いで勝者になっても、数段の高いレベルで通用するとは限らない。

「グローバルの時代、国際的に活躍したい」、この想いもあるし、企業側からの期待もある。
しかし、即実現するするわけではない。そのための心得は組織で活躍する条件「することは選べない」「人は選べない」ということだ。

辞令により担当職務は決まる。向いている、向いていないの逃げは通用しない。できないじぶんからできる自分づくりが成長過程である。その覚悟は、「適性は、ものにする執念に基づく努力の累積によって造るもの。

積小為大(せきしょういだい)との言葉がある。小さなことでも積み重ねればやがて大を為す、ということだ。「この仕事に向いている」とは、試されたそのレベルを認めての表現だ。プロも元はアマだった。やればできる。自身の可能性は無限なり。初心の「こうなる人」の想いの実現は、この取組みがあってこそである。

◆種から花を咲かせる育み
 
それでは花を咲かせる育み側に着目してみよう。それは、花を咲かす源の種を蒔く土壌(職場環境)を耕し、そして根(基本・技術、身体、精神)を肥やし、芽を吹き、茎を育み、枝を張る。しかもどんな厳しい環境にもしなやかに対応する芯を供えてた花木に指導することだ。
そのためには、時には指導者からの枝を切る、継ぐ剪定もある。

改めてその心得を確認してみよう。まず、各社トップの入社式の言葉の記事に目を向けてみると、

*入社の意義=「なんのために当社にはいった」の初心は忘れない
*経営理念の共有=「情報革命で人々に幸せに」、それは人々に幸せになって貰うため
・仕事とは相手の役に立つことをすること。具体的に相手に対してどう役立つか、自分の仕事が相手に届ける価値は何か、そしてその価値を最大化する底に志事の創意工夫がある。
・創業者「従業員を大切にせよ一つお客様を大切にせよ。一つ、技術を大切にせよ、そして社会に役立つことをせよ」—このDNAを引き継ぎ、社会やお客様に要求、期待に応え続けてきた。その信頼を得てきた。皆はその信頼のバトンを受ける。一人ひとりがその気になり、本気で主役としてワクワクと活躍しよう。
*行動力=授業料を払うことから、お金を稼ぐ立場になる、この自覚に切り換えよ
・考えている間は周囲の誰にも影響は出ない。それには自分の意見を発信すること、周囲に働き変えること、そして、自ら行動すること
*成長=失敗を恐れずCANを増やす。自分なりの考え、意見を持ち実際に試したい行動したい
*こんなとき、失敗したら迷惑かけるかも知れない失敗は無駄でもなく、失敗は好奇心を持った勇気を出して行動した証次につながる。経験、学び。今も経験が宝だ。できたことが、次のやりたいことになる。これが成長である。
*働き方改革=これからは「働く時間の長さ」でなく、「仕事のスピード」と「能率」を高めること。それは仕事を多くこなし、楽しいこと、辛いことを沢山たくさん経験すること。時には脳が汗をかくような、はらはらする経験を重ねることが近道
*働きがい=成功体験が生まれたとき
                 
等々が目についた。御社は如何であろうか。 

ならば、職場での育みは、このことばを具体的に落とし込んで行くことが理想である。そのポイントを新人への提起事項と融合してみると、

①一つ目は「新人の想い」と「企業側の期待」を摺り合わせする。
その実践策は 配属先部門長、直属上司、指導者の三者と新人の四者でミーテイングの実施である。

まず会社の理念・実行計画の確認から部署の役割を説明し「なぜ、この部署に貴方に来ていただきたかったか、これからこのような仕事をして欲しい。それが貴方の夢、想いの実現に繋がる」と伝える。
そして、新人から「どんな自己実現を求めているか」を引き出し、職場の期待と本人の活躍の方向性を共有化すること、これは以後の育成の軸となる。

これを行っていれば、「こんなはずではなかった」等の新人・受け入れ双方の違いによる早期退職は起こるまい。受け入れ職場で本人の人生観、職業観を理解しておくことは以後の育みの施しの整合性を説く上でも大事である。

②二つ目は、「目指す人財の条件」を明確に示す。新人の想いの第一段階は「早く一人前になる」ことの確認はした。しかし新人がそう述べても実態はなにも解らない。だからこそ担当する仕事の一人前像(いなくては困る人財)を示すことが不可欠。
任され、責任もって実績を創るその業務能力、組織の一員としての活躍規範、対人関係のありよう、企業ブランドにふさわしいマナーをわきまえた言動のスキルである。
導入研修で施す内容を確認し、部署への落としこむ応用力でもある。

目指す一人前の成長は守・破・離であるが、まず「守」=基本力は夢の実現の根であり、自信の芽である。特に倫理感に基づく当たり前(常識)の励行をきちんと指摘することは、現代は欠かせない。 

③三つ目は、成長を楽しめる育成プログラムの画を示すこと。それは、新人が成長できる会社として選んだ条件への対応である。三年計画、一年計画の育成プランであり、一人前に向けて成長の階段を上っていく楽しみを共有化する画である。

合わせて将来に向けてのキャリアプランの支援システムがあればその併用が望ましい。概ねのプラン内容であっても良い。目的は、新人がどんな指導を受け、成長できるかを理解し、自から成長するイメージを描くことにある。

以後の育成の実践は指導内容を具体化し、なぜこの指導をするか、何のためにマスターするかとこの育成プログラムとの整合性を示して行けば良い。学ぶ力が高まり指導効果が得られる前提条件だ。それは将来の一流、世界で通用する成長への楽しみへの誘いだ。

④指導の折には楽しさを演出しよう。「楽しさ」これが新人との波長を合わせる糧である。

ここでは2点提案してみる。

1)ティーチングとコーチングをバランス良く施す=新たな知識、技能の教えはティーチャー的(先生)ティーチングであり、理由、方法、手段など解りやすく指導する。そこにはやってみせ、言って聞かせてのステップがある。勿論その確認は、させてみて良ければ褒め、不十分なら追指導の施しだ。できる楽しみがここから生まれる。
 
一方 コーチングは本人の考え方を引き出す指導法だ。「君はどう思う」との質問を投げかけ、しっかりと聴き、出された考えに対して承認する。自分の考えを聴いてもらえた、認めて貰えたことは嬉しく楽しい。ならばしっかりやろう、とのモチベーションアップになる。楽しく自発的行動のできる育成には欠かせない。

2)遊び心を生かす=幼稚園を経営するO園長から卒園者に贈るカードをいただいた。カードに記された言葉は「あそべ あそべ まなべ」である。
O園長曰わく「遊びは創造性を高める」と説く。
例えば子供たちに
「砂場にバケツを持って行き、このバケツを使ってどんなことができるかと問うといろいろ出てくる。そしてじゃあ、やってみようというと真剣にそのアイデアに取り組んでいき、できた”と満面の笑みを見せます」という。

新人の持つ良さには類した魅力を秘めている。だからこそ楽しくとの言葉が発信されるのである。ユーモア、しゃれっ気、真剣さだけでなく楽しさを醸す遊び心で引き出し、職場の新たな力として生かしていくことである。

新人の柔らかな発想も生かす決断は指導者にある。
「部下は上役の器以上に大きくならない」。
 
桜の花も満開。一輪、一輪の美しさが寄り添って壮大な景観を創っている。まさに華やかさがありウキウキと心を駆り立ててくれる。新人が将来に向けても見事に咲き誇れと指導・支援しエールを贈ることは楽しい。その一端として「双方への楽しみ方」とした。

 

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◇澤田良雄氏

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
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