小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (43)
【コンセプトを立てたマーケテイング戦略 全4回】
第1回目「顧客は買う理由を発見するから購入する」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■基本価値
商品にはサービス価値の基盤となる基本的品質があり、これが商品の基本価値。
●時計……正確に時を刻むこと
●飲食料……安全であること
●自動車……使用目的にあった機能(速度、乗員数、積載量等)と安全性
商品には、この基本価値がキチンと備わっていることが、顧客に認識されることの第一歩。しかし、この基本価値だけで終わるとコモディティ化になる。
*コモディティとは、基本的な機能が備わっていればメーカーを限定せずに購入することで塩、砂糖、茶碗・皿、なべなどの食器、ティシュペーパーなどがその代表例。
■今だけ、ここだけ、あなただけのマーケテイング視点
商品・サービスが基本価値だけで終わるとコモディティ化となり、顧客の視点は商品価格の安さに目が向く。成熟社会の中小企業運営の基本は、他ができない手の込んだ技術・サービスの展開である。
理解しやすいように極端に説明すると、顧客が、自社の価値を「他に代替えができないもの」と評価すると、他社との価値比較は意味を持たなくなる。
比較するモノがなければ、販売シェアを取りに行くために値引きする必要がない。値決めを自社でできる。このような視点で商品開発・サービス展開する視点が、
●今だけ
●ここだけ
●あなただけ
のマーケテイング視点となる。
その切り口が
●限定生産して、特定の地域にのみ販売する
●高品質の(または他社にない)材料を使用した高級製品を製造する
●材料、原料が、通常の性質以上の特徴をもっている
●高度な加工技術が、活用されて製造する
●この人から買える
●多くの優れた部品から構成された精巧なシステム製品である
●この人がつくった物
等である。
この【3だけマーケテイング視点】の本質は、商品サービスの価値伝達の手段である。価値の伝え方に工夫が必要になっている。
顧客は安くすれば買うわけではなく、買う理由を発見するから購入している。これがストーリーの伝達である。
■商品のストーリーをお客様に伝える
商品にはストーリーがある。商品の背景にある「ストーリー」を提供することによって、消費者は商品サービスをさらに深く理解し、それが商品の「付加価値」として受け取られる。
ストーリーと言っても、実に様々だ。商品の開発秘話、開発に携わった開発者の素顔に迫るストーリー、また商品に利用されている素材の特徴や生産工程に係るストーリー、さらには商品が消費者のもとに届くまでの販売のストーリー…である発案者、開発者、見つけた人等の思いがある。
その思いを伝えることである生産者に親しみを感じ、生産者や販売者の理念に対して、より一層の共感を抱くことで自社商品のコアなファンを増やし、商品力(ブランド力)を上げることになる。
■売り手と買い手のギャップ
売り手側と買い手側の最大のギャップは、売り手側が買い手を一律に押えることにある。
買い手は同じ商品・類似商品をたまたま買っているだけで、その用途・頻度・重要度は会社によって明確に異なり始めている。
つまり、買い手が10あると、10通りのニーズとウォンツがあることを意味する。
この価値観の多様化に対応することのギャップが売り手側の問題となっている。
あるクリーニング会社の例である。
スーツ上下を500円前後で洗っており、多くのお客様が利用している。
今回、特別な洗い方で2,000円の高額料金で同商品を洗うサービスを始めた。そうすると、その仕上がりの良さに感動した幾人のお客様から大変なお褒めをいただいた。
サービスを提供している会社は、クリーニングは日常でご利用させるので、安くないといけないと思い込んでいた。
勿論、そのニーズは高い。しかし、高級仕上げを要望している新しいマーケットがあることを発見できたのである。
新しいマーケットを開拓しない限り、売上は確実に10%~20%規模で減少していく。新しいマーケットとはエリアであり、分野であり、業種、顧客、用途等の細分化である。
これは全くゼロからのスタートではない。現在の売上を構築している顧客層は必ず、いくつかのカテゴリーに分けられる。
基本的にお客様はミーイズムの塊であって、自分を・我が社を便利な一括キーワードである【「お客様」という括りにして欲しくない願望の塊】でもある。
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