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「最近の世界経済、日本経済について思うこと」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「最近の世界経済、日本経済について思うこと」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

私たちは普通、現状分析を行っていく際に、
「客観性の高い定量分析」
を極力行った上で、数値化出来ない要素などを加味する、
「定性分析」
を実施して、
「総合分析」
をしていくようにします。

しかし、最近では、数値化出来ない不確定要素があまりにも増え、例えば、株式投資を行う際の分析においては、
「ファンダメンタルズ」
による分析よりも政治、軍事、外交などの要因により左右される、
「投機の意思」
と言った、より定性的な要素に左右され易い状況となっているものと思われます。

こうしたことから、株価の変動は、ファンダメンタルズに基づく理由によって起こるよりも、その他の定性要因によって変動するよう
になっており、そうしたことから、
「株価はもはや景気先行指標と言い切れない」
と言ってもいい状況となっているのであります。

さて、こうして考えてくると、私は、現状にあっては、
「私たちの肌感覚をより大事にしなくてはならない」
と考えます。

更に、
「まさか、そんなことは起こり得ない。」
と簡単に情勢認識をしてしまうのではなく、少しでも、不測の事態が発生し、リスクの顕在化が起こる危険性があるのであれば、
「それに備えなくてはならない。」
と思うのであります。

そして、そうした考えをベースとして、例えば、企業経営に於いては、今、
「キャッシュフローマネージメントの充実」
を図り、
「広義のTail Riskに備える」
ことなどが重要となりましょう。

更に、経営姿勢に関しては、
「慎重に検討、決断、行動を起こし、責任を取る経営姿勢」
を取りつつ、
「顧客あってのビジネス。
お客様の為に働き、お客様に喜んで戴き、そのお客様からありがとうと言って戴き、対価を戴く。
それが売上高となる。
そして、その売上高からコストを差し引いたものが、本業の利益となる営業利益となるのである。
経営とは、この本業の利益たる営業利益の極大化に向けて頑張ることにある」
と考えるべきかと思います。

よって、
「拝金主義に基づく、マネーゲームビジネスは決してビジネスではない」
と考えるべきなのであります。

こうして考えた上で、2020年の世界経済、日本経済の、プラス要因を挙げると、
*米中摩擦の一旦の緩和
*英国とEUの一旦の落ち着き
であり、日本国内の視点からすると、
*人出不足による省力化投資、自動化投資などを軸とした、民間投資の拡大トレンド、
*国土強靭化政策の拡大などに伴う公共投資の拡大
*ベンチャービジネス拡大
などがプラス要因となりましよう。

一方、マイナス要因となる可能性がある点としては、
*信用収縮状況発生の兆候
*中国本土ディフォルトリスク発生の可能性
*アメリカのバブル崩壊リスク発生の可能性
*ロシア、トルコ、イスラエルを巻き込む形の中東リスク発生の可能性
*欧州リスク再発の可能性
*香港台湾問題
*北朝鮮問題
などが挙げられ、日本のマイナス要因としては、
*財政問題悪化リスクの可能性
*政治不信の拡大
などが挙げられましょう。

果たして、2020年には、世界は、日本は
「閉塞状態」
から脱却できるのでありましょうか?

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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