小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (49)
新春特別編:「2020年のキーワードは技術力による隠れたチャンピオン企業」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
2020年の初春を謹んでお慶び申し上げます。
新年にあたり、経営全般の基本方針を示唆させていただいております。
■既存衰退病
既存の商品を既存の方法で、既存のマーケットに提供するだけでは、売上高は確実に減少し、粗利益率は下がり、利益が出なくなります。
●トヨタから車がなくなったらどうなるのか?
●日本製鉄から鉄がなくなったらどうなるのか?
2003年、富士フイルム古森社長は、幹部に対して強烈な危機感を意識させ、新しい成長事業の育成に舵を切った。これが「既存衰退病からの最大の脱出劇」と称される富士フイルムの2年がかりの事業構造転換の始まりでした。
■看板事業の売上高比率が54%から1%未満へ
富士フイルムは、1996年頃から本格的普及が始まったデジタルカメラの影響で、写真フィルムの需要は世界的規模で2000年をピークに年率10%超のペースで下落し、同社の写真フィルム売上高も毎年200億円のペースで減少し、2011年度の関連事業の売上高は全体の1%未満となる状況での事業構造転換の話。
■勝てる固有技術
技術の棚卸により化粧品事業への参入が決まったときに、ある確信がありました。それは、
「先発メーカーがいる市場に最後発で割り込むためには、当然オンリーワンを投入しなければ成功しない。ベストワンでは失敗する」
との考えです。
そこで着目したのが同社のコラーゲン製造する固有技術。人の皮膚の約70%を構成する「コラーゲン」は、写真フィルムの主成分であり、この応用で開発したのが、ヘビーユーザーが多いスキンケア化粧品のアスタリフトの開発。
同社OBは成功のポイントは次の3つと振り返ります。
●最初の「やれそうか」は技術的裏付け
●次の「やるべきか」は業界トップになれるかの検証
●最後の「やりたいか」は会社の思いの強さ
■技術力残存者企業
2020年を目の前にして下記の企業戦略のターニングポイントが加速度的に進んでいきます。
●成熟社会
●マーケット縮小
●既存衰退病
●構造変化
●技術革新 etc.
以上の変化により、素材・材料の変化、生産方法の変化、サプライチェーンの変化、オペレーションの変化が進み、それに伴い消費者(個人・法人)行動の価値観が変化しております。結果として、2019年に成長している企業はマーケット(企業・顧客)が要求してくる幅広い技術の変化・向上に対応できる技術力対応企業に仕事や利益が集まる構造になってきています。
■固有技術
創業し、10年以上経過している企業には、必ず固有技術があります。あるから10年操業できているのです。
その固有技術の視点は、
●ものを生産するための技術
●サービスを生み出すための技術
●個々の分野での特有の技術
●自社製品・サービスの中核となる技術
です。
企業の戦略の組み方は、弱みを克服する戦いより、強みを磨いていく戦い方が基本となります。マイナスをゼロベースにする戦いより、強みを伸ばす戦いのほうが成果は出しやすい。その戦い方のキーポイントとなる武器が固有技術です。
●どこにもない・できない固有技術
●他社にもあるが、我が社がずば抜けている・優れている固有技術
を見つけることは、戦略構築の大切の方法です。
中小企業にはコア技術を見つけて、それを磨きあげて戦略展開をしていく発想が、あまりありません。
大袈裟になりますが、
・色々な企業でもできるモノをつくる、・色々な企業でも扱えるモノを販売する、・色々な企業でもできるサービスを提供していく、等の基本価値を売りにする企業よりも、
「基本価値に、自社にしかできない価値をマーケット(消費者・法人)に付加提供できる企業」
が求められています。
その付加価値のつくり方が自社の固有技術力を背景とする内容です。
この内容は、数年前から説明をしておりますが、2019年よりその流れが加速度的に、革新的に変化しており、成長企業の要因になっています。
単純な言い方ですと、
「現在の高い技術力(広い意味)が求められる仕事を引き受けるだけの技術力が自社にあるのか?」
ということです。
これに対応できる企業に仕事が集まっている状況です。
会社の成長とは,「人の増加ではなく、仕事の増加」によるものです。「難易度の高い仕事に対応する技術力」が企業成長の要諦になっています。
■隠れたチャンピオン企業
仮に現在のマーケット規模が100で業者の数が10社とします。縮小マーケットとはマーケット規模が70になる事。ポイントはマーケット規模が70%に縮小しても、業者の数は7社ではなく、3~5社に絞られる点です。この縮小マーケットで選ばれる要因が技術力となってきています。
隠れたチャンピオン企業の条件として、
●大きな成長は期待できないが、絶対になくならない製品を作り、取り扱う
●市場の成熟期を耐え忍ぶだけの体力がある
●競争相手は多いものの、それほど強くないマーケット
●新規参入が容易ではないマーケット
●トップ企業もしくはカテゴリーキラー企業になれる
●市場が小さく、ニッチすぎて新規参入が容易ではない《30億市場》
●真似されにくい独創的な事業基盤を創っている
等の要素が必要となります。
西暦2020年はご存知のように
〇東京オリンピック、パラリンピックの開催
〇2020年4月1日から「働き方改革関連法」が順次施行
〇5G(第5世代移動通信システム)のスタート
〇教育制度大改革スタート
〇世界政治の不透明感、等。
東京オリンピック、パラリンピックの開催前(7月)と開催中(7月24日から8月9日、8月25日から9月6日)ではオリンピック、パラリンピック最優先オペレーションにより、通常業務への支障が出る可能性があります。
また、開催後からは景気動向予測は難しいですが、中小企業の人材獲得予報は、好調傾向に変化すると考えます。
2019年7月の有効求人倍率は1.59倍で、前月に比べて0.02ポイントと3か月連続で低下しました。有効求人倍率(季節調整値)の悪化が3か月続くのは、リーマン・ショックの影響があった2009年8月以来のことです。
この時期より、採用マーケットに人材が出てきました。大手企業の人手減らしが進んでいく中で、中小企業に必要な人(質・量)の確保ができる環境に変化するでしょう。経済環境の予測が難しい複雑系社会(物事が予測不可能に変化する社会)ですが、目の前で起こっている、これから起こりうる状況に対して最適な判断を下していかなければなリません。
リーマン・ショック、大震災後の経済ランドマークであった2020オリンピック・パラリンピックが終了し、その後の新たなランドマークは自社で見つけ出すしかありません。そのキーワードが技術力による隠れたチャンピオン企業だとお考え下さい。
ご覧の各企業様においては、経営者・後継者・役員・部門長層を中心として各企業様が精励されることをお祈り致し、新年のご挨拶とさせていただきます。
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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。
こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm
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