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【社長の心 全4回】-④「貧すれば鈍する」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (55)
【社長の心 全4回】
第4回目「貧すれば鈍する」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■会議という名の儀式

業績が上がらない典型的なあるA社の営業所長会議に参加した。業績は上げるための検討をし、やるべきことをやらねば、上がることはない。

A社の業績は連続して売上も減少し、営業利益段階で赤字状態になっており、典型的な減収・減益企業に陥っている。会社再建のご依頼があり、どんな様子か確認したわけであるが……

会議とは「会して議し、議して決し、決して行い、行ってその責を取る」ことが本質であり、集まったら業績に関し議論をすることであり、その中身は反省と今後の対策である。

業績の上がらない会社の会議は反省ばかりに時間を取り、今後の対策検討に力を入れない。仮に入れたとしても内容の浅さが浮き出ている。

A社も9月で上半期が終わるので、その見通しと今後の対策について営業所長が集まって会議を行ったわけであるが、その中身を見ると、

① 上半期の数値を掴んでおらず、会議の席上で確認をする有様
② 日本語で一番、間違いが少ない言葉である「数字」に約・おおよそ等の言葉がついて説明する
③ 暗算能力が高いのかわからないが、電卓を持参しない
④ 業績が未達成の要因を正当化する技に長けている。
⑤ 責任感を感じているふりをして、儀式を逃れようとする姿勢がみえみえ(B所長は最も営業利益赤字額が多く、営業所をたたんで下さいと会社にしおらしいことを提案する)
⑥ 9月以降の対策検討がなされない
⑦ 負け犬根性が蔓延しており、あきらめムードが強い

■一事が万事

社長は会議の進行を部長に任せようとするが、黙っていることができずに、営業所長に細かい点を確認しながら、会議という名の儀式を進ませ、昼食休憩の時間になった。

昼食休憩にはお弁当が用意されたが、これも不思議なもので業績が上がらない営業所長たちは配膳等の手伝いをしない。おまけに前述のB所長はつい30分前には、業績が悪くて、会社に迷惑をおかけするので、営業所を閉めてくれ、と言ったにも拘らず、一番先に一人で食べ始めている。

業績が悪いなら、気を使い、配り動くのが組織人としての当然の感覚であろう。確かに昼食休憩だから、食べてもよいのだが、そのやり方にフィーリングが合わないのである。

同じ人間のやることだから、このように気を配れないことは、お客さん・職場のメンバーにも同じようなことをしているから業績も落ち込むのだろう。

また、この会社で食事の配膳で一番気を使い、準備をしているのが社長であったのだが、その姿を見て営業部長は自分の分を取って食べてくださいというだけで、B所長に続いて2番目に食べ始めた。

お茶を配り、食べる準備を社長がなぜするのか? それは誰もしないからである。

勿論、言わない社長にも問題はあるが、営業所長たちが何も感じないことが最大の問題である。

■業績向上に奇策なし

A社の状態をご紹介するとよっぽどひどい会社だと思われがちであるが、実は非常に今後伸びうる「商材の展開」の種を自社の固有技術として持っている会社であり、やり方によっては今後成長企業になりうる可能性を秘めている会社である。外部の第三者からみるとうらやましいぐらいの経営資源であるが、内部にいると自分たちで見えなくすることが多くなる。

「貧すれば鈍する」という言葉があるが、会社に例えると、業績の落ち込みが続くとその環境に慣れきってしまい、自分たちにはできない、無理だとか否定的な発想・考え方に陥り、自分で勝手に墓穴を掘ることである。

負けは必然的要素が強く、やるべきことができていないことをキチンとやらねば業績向上に奇策はない。

 

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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

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