【新型コロナ時代を生き抜く人事評価】
第7回「成績評価制度(2)~管理監督者が先頭に立ち、会社を変革せよ!」
蒔田照幸氏((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
今回は、成績評価制度において管理監督者の何を評価すべきなのかについて述べようと思う。部長や課長の役割責任を一言で言ってしまえば、
⑴仕事を通じて、部下の能力開発を促し、各人の目標を達成させる
⑵担当部署の目標を達成し会社に貢献する
の2つであり、これは不変である。
この2つの役割責任を遂行するための具体的行動について考えてみたい。
管理監督者としての仕事は8つある。そしてその8つの仕事を進めていく上で大前提となるのが、管理監督者としての高い意識であり、それは現状に甘んじることなく「課題を発見して考え抜き、変えていく」ことである。
これに関連して、最近読んだとてもいい書籍があったので紹介しておこう。
それは『ワークマン式「しない経営」』である。この本では、(株)ワークマンは2025年に1000店舗、年商1000億円に達し、このままではそれ以上の成功は見込めないと思われる中で、執筆者の専務取締役・土屋哲雄氏が「データ経営」を打ち出し、その実現に向かってどのような行動をとったか、あるいはとりつつあるのかが描かれている。氏によれば、自分が描く姿には程遠くまだ2割の出来だという。
氏は経営者として「エクセル経営」という明確な方向性を打ち出し、その中で地道に実績を上げた社員を抜擢して重要なポストに就けており、新しくそのポストに就いた社員も着実にその期待に応えている。社員が本気になっており、嫌になって辞めた社員はひとりもいない状況だという。氏が説く「しない経営」の中には、私と意見を異にする点もあるが、そのことの是非を考えることも含めて一読する価値はあると思う。
本稿をここまで読まれた方の中には、専務取締役だからこそ経営改革ができるのであって、部長、課長にできることではないと言う方もいるかもしれないが、それは間違いである。そう主張する人はどこへ行ってもできない理由ばかりを述べている。部課長といった経営幹部は、経営者を中心に「会社の変革のためには社員の考え方と行動をどのように変えるべきか」を徹底的に話し合い、その結論を共有すべきである。それが全ての出発点となる。
先述したように、管理監督者の仕事は8つある。
「受命」「段取り」「割当て」「管理監督」「指導」「調整」「審査」そして「報告」の8つである。
それぞれの仕事についてポイントを簡潔に述べておこう。
「受命」では行使できる権限の内容の確認をしておくこと、「段取り」では、能率と部下の能力開発の両面から考えること、「割当て」ではモチベーションアップに繋がる動機付けができるかどうか、「管理監督」では仕事の質を維持しながら仕事自体の刷新にも絶えず挑戦すること、「指導」ではOJTは重要だが、今の時代にこれのみでは限界がある。
管理監督者でエクセルや統計などに疎い人、特に統計などには疎い人が多いと思われるが、それらの人には、それなりの研修を受けさせること、また部下のエクセルや統計研修はそれらの分かる人に任せること、これらのことを人事部門が責任を持って計画、実施すべきである。
余談になるが、重要なので述べておこう。今、各社では、社長以下全員の学び直し(リカレント教育)を実施している。ぜひ、あなたの会社でも取り組んで頂きたい。
次に「調整」であるが、これは社内外の人との折衝であり、相互にどれだけの信頼感があるかが鍵だから普段の努力が大切である。「審査」は上司という立場からの判断であり、「報告」は口頭でするにしろ書面でするにしろタイミングよく行うことが大切だ。
管理監督者を実際に評価するためには、これらの役割を20の評価項目に置き換え、評価点も設けなければならない。評価点は、秀優良可劣の5段階を更に細かく区切って9段階がよく、「普通」という評価は5点もしくは10点にして、点数は9点から1点まで、もしくは14点から6点までがよい。成績評価基準書はこのようにして作成するのだ。
前回の非監督者用と今回の監督者用で全社員がカバーできるが、運用しやすいようにという配慮から職種の特色を入れて評価項目を作成しても良いだろう。
いずれにしろ、成績評価基準書のタタキ台は人事部門が作成すべきだが、納得性の高いものに仕上げるためにも全社レベルで議論し完成させたほうがよい。
★ご意見、ご質問がある場合は、清話会事務局までお願いします。必ず返信致します。
お問合せ→ https://bit.ly/2NIbVC0
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◆蒔田照幸((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など約700社、人事コンサル歴35年、懇切丁寧な指導で定評がある。人事評価分野では、2018年に大学と提携しAI投影法を開発。京都府立大学卒。1949年三重県出身。
◎賃金人事コンサルティングオフィス
http://bit.ly/2RGZxpl