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成績評価制度(5)~全社調整会議のタタキ台は対人比較投影法で(蒔田照幸)

【新型コロナ時代を生き抜く人事評価】
第10回成績評価制度(5)~全社調整会議のタタキ台は対人比較投影法で」

蒔田照幸氏((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役) 

評価が終わったら今度は調整作業に入ることになる。最終的に欲しいのは等級毎のSABCDだから等級毎に順位をつける必要がある。課間、部門間、そして最後には全社調整をして一番から最下位まで並び替えて順位をつけるのだ。
 
調整の考え方を説明しておこう。並び替えても、最初の評価単位(ここでは課)の中での「順位と相対的間隔」は維持されることになる。

「順位と相対的間隔」というと小難しいように思えるが、簡単な話である。例えば、Ⅱ等級で、大川君70点、中川君50点、小川君40点だったとすると、順位は、1位大川君、2位中川君、3位小川君ということになるし、3人それぞれの点数差は、大川君と中川君の点数差20点、中川君と小川君の点数差10点なので相対的間隔は2:1ということになる。この順位と相対的間隔を維持しようという訳である。
 
それでは、点数自体は気にしなくてよいのだろか。答えは、気にする必要はないというのが正解だ。その理由は、複数の課から提出された点数は、そのまま並べて順位をつけるという訳にはいかないからだ。それは、それぞれの課長には、評価の時に生来の甘辛のクセや集中分散のクセが出るだろうし、また自分の課だけを見て評価するわけだから、当然、課間の個人別成績格差は反映されないからだ。

ではどうすべきなのか。画期的な方法がある。それは、集中分散のクセを矯正することだ。すると、瞬時にして甘辛のクセも矯正され、課間の個人別成績格差も反映されることが分かっているのだ。
 
この集中分散のクセを矯正する方法は、比較的人数の多い課から、基準となる課を決めて
この課に向けて各課の点数を投影していくというやり方である。この手法が対人比較投影法なのである。
この対人比較投影法を簡単に説明しておこう。

基準となる課を第1課とし、この第1課の社員の点数がプロットされた直線上に、第2課の社員の点数を投影する。やり方は、第2課から比較的成績が優秀だった者とあまり仕事ができなかった者のふたりを選んで、それぞれ第1課の者と比較しながら第1課の中でなら何点になるかを調整者である部長が決めるのだ。決まれば、それぞれを直線で結び、その交点を起点にして第2課の者の点数を第1課に投影するのである。これで完了である。

作業的には難しいことではないのだが、第2課のふたりの点数を第1課の中では何点になるのか、部長が決めるところが一番の難関だろう。だが、これくらいは言い切れるように日頃から社員の働きぶりを見ておくのは部長の務めである。とは言え、部長にとって荷が重いのは確かである。

そこで当社で制作したのが、AI(人工知能)投影法である。対人比較投影法の交点をAIに探してもらおうという訳である。むろんこれまでの対人比較投影法での交点は部長判断だし、AI投影法では数式である。当然、交点は違うが、最終的に経営層による調整会議で決められるということであれば、精度は部長判断による順位付けもAIによる順位付けも同じであると言って間違いない。

誤解されがちなAI(人工知能)の特徴を、私なりにまとめると次のようになる。
(1)鉄腕アトムやドラえもんのようなAIを作ることは不可能
(2)AIは心を持たない
(3)どんなことにも対応できる汎用型のAIは存在しない
(4)AIは、コンピュータつまり計算機であり計算しかできない

しかしながら、数式自体は難解になりがちだが、数式をコンピュータに入れてしまえば驚異的な結果を表示してくれ、思わず“さすがAI”と言ってしまいたくなる。
 
AIは全体を俯瞰して数式で結果を出すものである。人によっては評価という重要な場面にしては熱い想いが感じられないではないかと思われるかもしれないが、これは最終調整のためのタタキ台である。タタキ台は機械的に作り上げ、その後は調整会議で侃々諤々の熱い議論を戦わせればいいのではないだろうか。

コロナはいずれ収束するだろうが、その後も多くの会社で様々な形態でテレワークは続くと思われる。調整者としての部長が被評価者の働きぶりを目にする機会も減るだろう。そのとき、調整会議のためのタタキ台作りには、このAI調整システムは大いに役立つと思う。

なお、この調整会議では最終評語まで決めることになる。次回は評語の決め方から始めることにしよう。

 

 

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蒔田照幸((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など約700社、人事コンサル歴35年、懇切丁寧な指導で定評がある。人事評価分野では、2018年に大学と提携しAI投影法を開発。京都府立大学卒。1949年三重県出身。

◎賃金人事コンサルティングオフィス
 http://bit.ly/2RGZxpl