真田幸光の経済、東アジア情報
「台湾企業との連携について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
私は、自らのビジネス経験からして、中国本土との間の、
「政治外交的リスク」
はあるものの、
「日本企業の投資活動活性化の為の効果」
と、中国本土、韓国を意識、また、米国の外交姿勢の変化を勘案した、
「日本外交のバランス拡大効果」
を考えると、
「相対的には親日的とも言える台湾」
とのビジネス関係を強化しても良いのではないかと考えています。
もちろん、
「台湾に反日的な意識」
が存在しないわけではなく、例えば、
「尖閣列島問題」
などを考えると、台湾に反日的な意識が存在していることは間違いありません。
しかし、相対的には、
「日本が一定程度信頼し得る国」
として、
「台湾」
を考えることができると思っています。
そして、そうした台湾の企業から日本企業に対するアプローチがあることに期待もしています。
こうした中、半導体の受託生産を行うファウンドリー市場で世界最大手となっている台湾積体電路製造(TSMC)が、
「中国本土の台湾に対する圧力」
を意識し、特に今年に入り、
「情報覇権争い」
の視点からも、反中姿勢を強める米国とそれに追随する日本との関係を強化してくる経営姿勢を示しています。
これに対して、日米両国政府も、TSMCを支援し、第5世代(5G)移動通信システム、人工知能(AI)、自動運転車、クラウドなど未来産業の重要部品である半導体の供給を確保すると同時に、中国本土の「半導体の一気通貫生産」の芽を摘む戦略に動き始めています。
TSMCは日米両国による全面的な支援を受け、更に三星電子を抑え、急成長するファウンドリー市場で独走体制を固めるメリットも狙っているものと見られます。
そして、具体的に、TSMCは既に、日本の茨城県つくば市に日本初となる本格的な開発拠点を設立、約190億円を投じて、
「今後の開発の重要性が増している『後工程』と呼ばれる分野で、日本での研究開発に取り組む」
という姿勢を示し、熊本への進出も内定しました。
これまでは基本的には、台湾のみで半導体を生産してきたTSMCは、海外進出に取り組み始めており、昨年には米アリゾナ州に35億米ドルを投資し、初の海外工場を建設することを決めたのに続き、日本にも進出してきました。
インテル、アップル、クアルコムなど大口顧客が集中している米国と半導体素材・設備の先進国である日本にそれぞれ拠点を置き、更なる発展のチャンスを探るTSMCと日米の思惑が一致した形となっています。
そして、日本としては、本件をパイロットプロジェクトにして、もっと台湾企業との連携を図り、
「日本経済の活性化と外交バランス強化」
を図っていってはどうかと私は考えています。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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