小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (20)
【摩訶不思議な中小企業という生き物 全4回】
◆第4回目「なぜ、社員は経営計数や資金テーマに弱いのか?」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
※これまでの記事は、こちら。
■なぜ、幹部は経営計数を読めないのか?
それは経営計数に触れる機会がなく、仮にあっても現場で活用せざるを得ない仕組みがないからである。経営数値は専門学であるので読み方や中小企業独特の数値の背景に隠れている意味を理解させないといけない。
例えば経営者の方が心配される点として、役員報酬の公開はどうすべきかと言われる。
中小企業の場合は同族経営である。なぜ、同族経営なのかと言えば、中小企業は自己資本が少ない。そこで当然他人資本を入れなければいけない。他人資本の代表は金融機関からの借入れである。
担保能力がないと金融機関はお金を貸してくれない。担保提供は資産のある経営者一族になる。だから必然的に同族経営にならざるを得ない。なので、結果として役員報酬も高くならざるを得ない背景がある。
こういう背景、意味合いをキチンと教えていくと社員の皆さんは理解できる。「能力がないからわからないのではなく、勉強する機会がないから理解ができていない」だけである。
その上で、会社の実績数値を公開しながら且つ、自分達で数値の予算、予測を立案できるように訓練しなければならない。
そして経営施策と数値との関連性を理解させていく。例えば粗利益と人件費との関係、在庫と資金繰りとの関係である。業績を上げようとすれば、当然、経営計数に触れさせないと業績は向上しない。私の経験から見ると最初はトンチンカンでも必ず、理解でき、活用できるようになる。
■なぜ、資金繰りが慢性的に苦しいのか?
それは「社長以外に誰も資金繰りを考えていない」からである。
資金繰りとはこれから先の入りと出の状況を把握し、素早くバランス策を取ることである。
「販売なくして事業なし、資金なくして継栄なし」これは経営運営の常道であり、息を吸ったら吐くように繋がらないといけない。これが繋がらないから経営者は苦悩する。繋がらない会社の共通点は「専門バカ」が多い会社によく見受けられる。
専門バカとは自分の得意分野しか興味がなく、会社を運営するその他の施策に見向きもしない人のことであり、材料を仕入れ、製品を作り、販売しても納品・検収までしか興味がなく、その先の代金の回収・仕入れ代の支払等はどこ吹く風状態である。
このような人は、会社に資金がなく、賞与が出せない状態に陥ったときに、自分たちはこれだけ頑張り、売上を向上させたのに、なぜなんだと言い張るだろう。資金無くして経営なしは、経営の常道であり、資金に関して自覚症状が無いところがことのさら厄介である。
■なぜ、家庭のコストは削減できるのに、会社ではコストダウンできないか?
それは「勘定科目毎の金額を押えていない」からである。
家庭でコストが削減できるのは勘定科目毎に金額を押えているからである。パートの主婦に「1ヶ月の電気代は幾らですかと聞けば、幾ら」と直ぐに答えられる。しかし会社の中で電気代が幾らと聞いても答えられる社員は非常に少ない。家庭の主婦は電気代を月に1,000円減らすことを決めると、先頭になり家族に協力させ実践する。つまり「何が幾らかかる」の基準を押えているから具体策が出る。
会社では、自分たちがどの科目で幾ら使っているかを知らないから対策の打ちようがない。数字に無関心でルールと基準が無い会社はコストダウンができにくい条件を揃えている。
中小企業ではコストを使っていないとよく言うが、現状のやり方においてはそうかもしれない。しかし、今の方法をまだ徹底させるとかやり方を少し変えることでコストは下がる。
(この項、了)
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筆者 小池浩二氏が
【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
YouTubeで説明しています
是非、ご覧ください
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