小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (42)
【戦い方のセオリーづくり 全4回】
第4回目「規律を重視する組織を構築せよ」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■スタンダードルールとローカルルール
社員に自社のことを理解させたら、次は「規律」を守らせることである。
規律とは、仕事をやりやすくするための共通したルールと基準である。これは、会社の判断基準・行動のあり方を左右するものである。そして、そのあり方によって、その企業に「モラル」があるかないかが問われることになる。
昨今は目に余るモラル破りが多すぎる。無人農薬散布ヘリコプターが軍事武器に転用可能であることをわかったうえで輸出した大手発動機メーカー、社会的弱者をないがしろにした大手ビジネスホテルチェーンなど、例を挙げればきりがない。
このような企業は、いくら叩かれても咽喉もと過ぎればなんとやらで、痛くも痒くもないのかもしれない。同じ法人格を持つ会社でも、違う生き物なのだと痛感する。まさかそんな企業を目指す経営者はいないだろう。ならば規律を守らせる集団をつくらなければならない。
規律=ルールには2種類ある。一つはスタンダードルールであり、もう一つはローカルルールである。
スタンダードルールは、関係するすべての者が遵守しなければならないルールであり、代表的なものは法令である。
ローカルルールは、関係者のうち、ある特定者が遵守しなければならないルールであり、代表的なものは社内の「決まりごと」であり、暗黙の了解事項である。
最近では、スタンダードルールを遵守しないモラル破りが横行しているから厄介である。
このスタンダードルールが、昨今は、多様化・高度化した内容になっている。この点が中小企業に及ぼしている影響は非常に大きい。しかも厄介なことに大手企業だろうが、中小企業だろうが、求められるレベルは同等になってきている。
代表的なものが個人情報保護、環境保護である。中小企業は、いかに業績を上げるか、資金繰りをどうするか、人の確保をどうするかなどの現実的なテーマに加え、多様化、高度化したスタンダードルールへの対応もしなければならない。
経営レベルをますます上げざるを得ないことばかりであるが、それでもモラルを維持していくためには、社員の意識を高め、自浄作用を強化するしかない。
■規律の背景・理由を伝える
職場の規律は集団活動に秩序と統一性をもたらすためにある。だから具体的で、はっきりした規律・規定・基準を設定し、誰にでもわかるようにしないといけない。そして、職場の規律を社員に周知徹底させることである。
規律の存在は知っていても、なぜこのような規律をつくったのか、その背景・理由を知らないと規律は風化しやすい。社員から質問されたとき、規律が乱れ始めたときは、必ずその背景・理由から説明しなければならない。「できていないからダメ」だけでは、意味がない。
違反行動に対しては、その場で厳しく注意をすることである。例えば遅刻しても何も言われなければ、遅刻してもいいのだと周りの人間が思う。そうすると職場の規律はすぐに乱れる。その場で指摘するから、効果があるのだ。
違反があったときにすぐに注意ができる会社には、規律ある職場が生まれる。もちろん、そのためには経営者・幹部も常に規律に従った態度・行動をとらなければならない。
■ザ・リッツ・カールトンホテルの行動指針
世界のホテルのなかで、トップレベルのサービスを提供するホテルとして君臨するのが「ザ・リッツ・カールトン・カンパニー」である。
このホテルは1983年、米国アトランタで誕生した新しい会社であるが、世界に37あるリッツ・カールトンは、多くの利用者を魅了し続けている。それは、さまざまな工夫がなされているからだが、やっていることの本質は中小企業が非常に参考になるものである。
リッツ・カールトンには「クレド」と呼ばれる独自の理念があるが、世界中のリッツ・カールトンの全社員が、この理念と理念を実現のための具体的な行動指針が印刷されたカード(ラミネート加工で折りたたむと名刺サイズになる)を常に携行している。
この具体的な指針は全社で共有する「ゴールデン・スタンダード」と位置付けられていて、 これを実践するための「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」が20項目ある。日本風にいうなら、「考え方・行動の基準」である。そのいくつかをご紹介する。
「妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人ひとりの役目です」
「職場にいるときも出たときもホテルの大使であるという意識を持ちましょう。いつも肯定的な話し方をするよう、心がけます。何か気になることがあれば、それを解決できる人に伝えましょう」
指針はこのように、具体的でわかりやすい言葉で述べられている。そして、泥臭いが毎朝世界中のリッツ・カールトンでこれを唱和しているのである。
昨今の中小企業はこの泥臭さが少なくなっている。経営理念・行動の原点を作成したら、名刺サイズに印刷し、毎朝朝礼で唱和すればよい。
唱和とは「声を出すだけ」ではない。声に出しながら確認し、考えることである。確認とは声に出した内容を自分自身がどのように取り組んだのかを考えることである。
この行動を1年200日繰り返せば、強い集団になる。
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