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「世界経済フォーラムの世界競争力報告について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「世界経済フォーラムの世界競争力報告について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

スイスに本拠を置く非営利財団であり、国際社会から一定の信頼を受けている「世界経済フォーラム
(WEF)」が毎年発表している、
「2019年世界競争力報告」
によると、シンガポールが首位となり、昨年首位だった米国は2位となっています。
また、日本は6位と前年より1つ順位を下げ、3位となった香港に抜かれています。

WEFは、世界の141カ国・地域を対象に、基本環境、人的資源、市場、イノベーション生態系など4部門、更に、革新力、労働市場など12項目などを、統計データまたはアンケート調査に基づき、100点満点で評価をし、国家競争力ランキングを決定しており、特に今回は、
「人的資源や制度改革などに投資した国は生産性を向上させた」
と言ったコメントを加えています。

更に、
「政府や中央銀行が金融政策を利用して経済成長を刺激する能力が衰えている。
生産性の向上や所得格差の縮小を実現する競争力強化政策が重要である」
と極めて、正論を掲げており、私としては、日米欧が示す、金融緩和策、マイナス金利策の見直しといったものも含め、こうした、WEFの指摘を真摯に捉えてもらいたいと考えています。

また、日本を見ると、総得点は82.3点と、前年より0.2ポイント低下しています。
長寿を背景に「健康」は100点を受けていますが、硬直的な労働市場や、女性の労働参加が不十分である点などに改善の余地が大きいと厳しい評価を受けました。

こうした点が、国際社会から信頼を受けている国際組織の一つの日本に対する見方と私たちも意識しておくべきでありましょう。

また、再び、全体を見ると、今回の調査では昨年2位だったシンガポールが1位に浮上し、2~4位は米国、香港、オランダが続いています。

1位のシンガポールは「金融システム」「マクロ経済の安定性」などが高評価で、84.8点を記録しました。
WEFは米中摩擦に伴う生産移転などを念頭に、
「シンガポールやベトナムなど貿易摩擦の恩恵を受けた国もある」
とシンガポールが今回首位に躍り出た特殊性について、コメントしている点は留意、来年のランキングを、注目したいものであります。

また、3位の香港は金融やマクロ経済が評価され、83.1点と前年より4つ順位を上げています。

但し、その後の、長引く市民デモが、来年のランキングには影響する可能性があります。
アジアの他の国については、台湾が12位、韓国は13位、中国本土は28位となっています。

尚、世界の主要国であり、基軸国でもある英国は、欧州連合(EU)離脱で揺れていることを今回は大きな背景として、1つ順位を下げて9位となっている点も特筆されましょうし、来年にこれが改善されるのか、悪化するのかも注目されましょう。

また、私の長年の調査対象国の一つである韓国については、13位に評価され、昨年に比べて2ランク上昇しています。
 
韓国の総合順位は2017年の17位、2018年の15位と順位はじわじわと上昇しています。
情報通信技術の普及、マクロ経済の安定性などは最上位圏に入っており、一方、雇用、解雇慣行、労使協力など労働市場に対する評価は順位を下げています。

即ち、情報通信技術の普及、マクロ経済の安定性で1位となったほか、インフラ(6位)、保健(8位)、イノベーション能力(6位)などで上位に入っています。 

一方、生産物市場(59位)、労働市場(51位)、制度(26位)などで競争力が劣っており、生産物市場の順位が低いのは、独寡占の水準(93位)、関税率(91位)などの評価が特に低かった為とされています。

また、労働市場の評価では、整理解雇費用(116位)、雇用・解雇慣行(102位)、労使協力(130位)、外国人労働者雇用の容易さ(100位)など細部項目が最下位圏に留まり、制度部分では政府規制が企業活動にもたらす負担(87位)、政府の政策安定性(76位)、社会資本(72位)、司法の独立(69位)などの評価が低くなっています。

国際社会の国別ランキングを見る一つの参考としたいと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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