小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (22)
【中小企業の経営理念構築 全4回】
◆第2回目「理念を作るための4つの原点エッセンス」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
経営理念は「創業の精神」「商品の原点」「顧客の真の要望」「職業認識・誇り」の4つの原点を検討することにより導き出される会社のポリシーである。
■創業の精神
企業の創業期には、現在のようなお客様・関係先・設備・信用のれん、そして社員は存在しない。つまり、人・物・金・実績・信用なしの「ナイナイづくし」からのスタートするのが、古今東西、創業期の共通点である。その中で、唯持ち得たのは「何とかお客様に喜ばれよう」「一途に一生懸命に頑張ろう」とする「頑張リズム」だけである。
それが、熱意・誠意となって工夫しながら、あらゆる難局を乗り越えて、現在の姿に成長発展してきた。また、バトンを受けた企業は先代から語り継がれた家訓・商訓・教えを大切に受け継いでいく。
そうした創業の精神は、時を経ても常に正しく、創業の精神を忘れ果てた頃から会社は方向を見失い、種々様々な経営問題が発生する。
創業時の苦労・エピソードは、現在の社員は知らないことが多く、現在の会社の姿・内容を作った原点を知ることは非常に重要である。歩みを知ることは経営者の価値観・企業観・人生観を理解することであり、企業人・職業人としての価値観の統一につながる。
【作り方】
①会社の歴史がわかる年表・創業時の写真・道具等を用意してもらう
②社長または会長に創業の精神(創業から現在までの歴史)を語ってもらい、(これが大切である)重要なキーワードを言葉としてまとめる。
③創業の精神の事例
・職人気質 ・感謝 ・筋を通す ・誠意 ・挑戦 ・努力 ・頑固(妥協しない) ・真心
■商品の原点とは(何を売っているのか)
商品とは何か?という質問は、当たり前の質問のようで実は重要な問いかけである。
商品は目に見える物体(仕様・機能・サイズ等)であるが、その物体そのものが商品の本質ではない。その商品が「利用者にどのようなお役立ちをするのか?」という問いかけに出てくる答えが、その商品の本質であり、原点である。
オートバイのハーレーダビッドソンは、ハーレーそのものを売るのではなく「ハーレーのあるライフスタイル」を売っている。そのために顧客との関係性構築を最も重視しており、そのために下記事例のプログラムを絶えず開発している。
○顧客コミュニティであるハーレー・オーナーズ・グループの運営
○クリスマスパーティーなどの各種イベントの開催。
○ユーザーが一年間の走行距離に応じて表彰され殿堂入りする「走りの殿堂」
ハーレージャパンが構築している関係性とは、顧客の囲い込みではなく、心と心のつながり、「絆」を構築している。
あるパン屋は「パンという物体を通して朝食のお役に立つこと」を売っている。「おいしい焼き立てのパンを食べてもらう」ために、笑顔と元気な挨拶を添えて注文を受けたパンを配達している。これがこのパン屋の主張であり、この主張に共鳴する人をお客様にすれば後から売上はついてくる。つまり、
商品の原点には正解や間違いはなく、その会社固有の考え方が狙うべきターゲット層やマーケットに受け入れられるかがポイントとなる。
【作り方】
①自社の商品の原点討議「何を売っているのか」を経営者、幹部で検討し、自分たちの仕事に対する信念を商品に反映させる
②商品の原点の事例
■我が社の顧客とは誰か?
我が社のお客様とは誰か?
買ってくれる人すべてがお客様ではない。顧客政策が明確な企業は、顧客に対しての考え方が明確であり、世の中すべての生活者を顧客として捕らえていない。すべての生活者が満足する商品を提供することは当初からできないということを認識した上で事業を行っている。
自社の商品を誰(主力となる層)に売りたいのか? ターゲットを明確にすることにより、その主力お客様層の特徴がわかり、より一層お客様の真の要望に応えられるサービスが可能になる。
名古屋を本拠地とする宝飾の(株)浅野屋は、「モンキーフリップ」という眼鏡専門店を展開し、若い男性を中心に、おしゃれな眼鏡を販売している。
顧客政策が明確であるから、モンキーフリップは効果ある販売方法を生み出しており、例えば
・買い手が集まる場所(ロックハウス)でのプロモーション
・東海圏の若い男性向けタウン誌に絞った広告
・中古車ショップ、アパレルショップでオリジナルの売り場づくり
等を行っている。
洋服ならば、
①若い勤め人の人、②ミドルエイジ主婦層、③ママ友世代、④子育て終わりの主婦、⑤中高年、⑥セレブ層、⑦着心地がよく、長く着られる服を求める人、⑧カジュアル大好き
等々と顧客政策は変化する。
それに従い、品揃え、宣伝方針、サービス、店舗設計、流通チャンネル、売り方等と何から何まで変化する。つまり、あなたは誰に売りたいのか? これによって商品・単価・売り方が全部変わるのである。
【作り方】
①我が社の顧客は誰かの原点討議「主力となる層」を経営者、幹部で検討し、その顧客の真の要望をサービスに反映させる
②我が社の顧客の事例
・商圏500M半径に住んでいる人で60歳以上の健康に注意している人
・30~40歳代の主婦でおしゃれに気を使う人
・わが社の製品の価値観を理解し、購買力のある人
・目の肥えたビジネス・レジャー客
・富裕層で介護が必要な老人
■我が社の職業認識・誇りとは?
“自分の職業に誇りを持っていますか”“仕事にやりがいを感じていますか”の問いに肯定的に答えられる人は職業人として生き方が明確な人である。
職業としての哲学・らしさの追求をするために自分の職業認識を深めることが、自分の仕事に誇りを持たせる。このことがプロ意識を醸成し、その職業の専門家をしての目覚め・気づきを与えてくれる。
自分の仕事は「営業マン」ではなく、「○○の専門家」ですと誇りにすることが個人・会社の存在意義を高めることにつながる。会社の仕事に職業を求めることは、職場でプロの自分を意識することになり、仕事が自分に意味を持ち始める。
そうなると、仕事はいきいきとした存在となり、「働かされているという意識」なくなり、自分が好きでこの仕事をやっている意識になり、自立人の集団になる。
【作り方】
①我が社の職業認識・誇りの原点討議「自分の職業の意味・存在価値とは」を経営者、幹部で検討し、自社の職業の誇りは何かをまとめる
②我が社の職業認識・誇りの事例
■経営理念の事例
以上の4点の原点を討議し、経営理念を作成していく。このときに原点討議した4点について、どの原点にウエイトを置くかは会社独自で決めて作成していく。
下記に経営理念の事例と4つの原点のウエイト付けの事例をご紹介したい。
(次回に続く)
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筆者 小池浩二氏が
【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
YouTubeで説明しています
是非、ご覧ください
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