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【シェアの奪い合いが生存条件になる時代が到来 全4回】-①「マーケットを見る視点」

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (34)
【シェアの奪い合いが生存条件になる時代が到来 全4回】
第1回目「マーケットを見る視点」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■TOP戦略で継続して栄える

日本の多くの産業は成熟・衰退期に集約されている。それでは、成熟・衰退期の特徴だが、成長成熟期は、成長市場であるが、成熟化の要素を求められる。

ビジネス成熟期は、新しい用途開発や新市場開拓、製品リニューアルが必要な時期。衰退期は、市場が完全な飽和状態となり、だんだん衰退していく段階である。この3つの期への対処方法は大局で見ると、縮小マーケット=残存者利益の流れになり、対策としてTOP戦略が必要になる。

T……Target(狙うべきターゲットを決める・密着し戦う土俵を決める)
O……One and only(唯一無二の存在でマーケットシェア世界一)
P……Profit(利益を叩き出す)

マーケットシェア世界一を目指すためには、勝てる土俵を選び、創ることであり、そして、そのマーケットから選ばれる商品・サービス体制を築くことである。

■マーケットシェアの視点

弱者は強者の真似をしないことだ。
需要量(マーケットサイズ)が低下している現状で売上高を伸ばすには、マーケットシェアを拡大することが決め手となる。

衰退産業の中でも業績を伸ばしている会社は、「シェアポジション」が高い。売上目標・計画を策定する時に得意先の見方をシェアという数値を通してみると、見えてくるものが変化する。

現在は、マーケットシェアから戦略を組み立てる時代。勝てる場所はどこなのか? そのやり方は? どのライバルを叩くのか? のマーケットシェア視点を持つことだ。

しかし、大企業のシェアの考え方は、中小企業には向いていない。中小企業のマーケットシェアの押さえ方は、マ-ケットにおいて、何番手に位置しているかで構わない。

●全体で何番手なのか
●カテゴリー別で何番手なのか
●それは伸びているカテゴリーか
●減少しているカテゴリーのどちらか
●自社が得意なカテゴリーで何番手なのか
●伸ばしていきたいカテゴリーで何番手なのか
●どのカテゴリーを奪っていくのか

おおよそでも構わないので、まずは自社のポジションを押さえることで上位の企業・下位の企業への対策が戦略として生まれる。

■戦略の基本

戦略の基本は、勝てる場を見つけ、勝つための条件を整えることにポイントがある。単純に、トップ企業の真似をして戦線を拡げるのではなく、自社の得意分野に特化し、勝てる場所を見つけ、勝っていく事だ。

弱者は強者の真似をしないこと。これが弱者の戦略の基本となり、その基本形は以下の通り。

●一点集中……攻撃目標を一つに絞り、強者の弱点を重点的に攻める
●土俵を変える……強者が手が出せないカテゴリーで戦う
●接近戦……強者に先んじて、顧客ニーズの把握や顧客への接点強化を図る
●局地戦……スキマ・ニッチ市場に競争の場を特化させる
●陽動作戦……従来パターン以外の方法で、強者を出し抜く
●グッピー戦……より弱い者を叩く戦略

戦略とは勝つことを前提にして戦わないと、資源の乏しい中小企業では命取りになる危険性がある。

■中小企業の戦略は勝てる土俵で勝つことが原則

いくら素晴らしい物を作っても、勝たなければ意味がない。戦う土俵=勝てる場所を見定めないとまずい戦い方になる。

クジラという大きな生物は太平洋で泳げばよいが、ミズスマシが太平洋に出たら、直ぐに波に飲み込まれ。小さな水たまりで我が物顔で振舞う方がよいわけだ。

濁った水たまりでも中に誰もいなければ勝てる。これが戦い方であり、勝てる土俵で勝つことが原則だ。

■市場展開の3パターン

●あった市場……時代の変化、消費者ニーズの変化で消滅した市場
●ある市場……現有、既存市場
●あるはずの市場……将来生まれる可能性のある市場

あった市場は、本質的には市場が消滅して、弱小企業がなくなる。代表的な市場にレコード針業界があり、そのトップメーカーであったナガオカという会社は、今では独占状態。つまり、圧倒的に強い会社が生まれるのがこのパターンである。

ある市場は、成熟化・少子高齢化・人口減少化・グロバリーゼーション化で苦戦をしているケースが多い。

あるはずの市場は、創造(新しい市場を創りだす)・開拓(できたばかりの市場を広げる)・深化(市場を狭く深く掘り下げる)・蘇生(勢いの衰えた市場をよみがえらせる)・シフト(従来の市場と違った市場へ振りかえる)・代替(機能や材料の変化で変わる商品、サービス)がキーワードとなる。

■8つの市場選択パターン

●市場創造……新しい市場を創りだすパターン
① 新製品から市場をつくる=改良技術・従来の新用途開発
② 新技術から市場をつくる=独創性・応用
③ 市場ニーズから市場をつくる=市場ニーズの探求

●市場開拓……できたばかりの市場を広げるパターン
① 成長率が低い市場の育成と活性化が課題
② 市場における企業・製品の知名度アップ
③ 販売経路の開拓・拡大・価格戦略
④ 需要喚起戦略≪攻め≫…消費者、ユーザーの需要喚起
⑤ 供給確保戦略≪守り≫…生産体制、技術の深化、コスト、販売経路づくり

●市場拡大……市場を大きく広くするパターン
① 大規模で多面的戦略の展開
② 多元的・多角的な展開で平面戦略だけではダメ

●市場深化……市場を狭く深く掘下げるパターン
① コンセプトを明確に絞る
② 専門性で戦っていく

●市場蘇生……勢いの衰えた市場を蘇らせるパターン
① マーケットの再編成
② 製品改良
③ 市場の斜陽化

●市場シフト……従来の市場と違った市場へシフトするパターン
① 市場蘇生の見通しが深い場合はシフト
② 人・物・金をより一層効率的に動かす

●市場縮小……採算悪化した理由で小さく縮めるパターン
① 市場の成り行きに任せず意志的に縮小し、新しいサービスの提供
② 古い商品、アフターサービス(時代遅れ)を顧客へ供給

●市場撤退……市場の魅力がないため手を引くパターン
① 捨てる勇気

ご参考にしてください。

■狙うべきマーケットサイズは30億市場

マーケットサイズの視点でニッチ分野・すき間分野を考えると、5年前までは100億、現在のニッチ分野・すき間市場規模は30億円と変化している。

このマーケットサイズの変化は大手企業の国内戦略の変化からきており、その代表格がパナソニック。
津賀社長は社内に「安ければ何でもよい市場からは、撤退せよ」と発信しており、ある分野や地域などの様々な切り口で、夫々の顧客に密着して、そこでトップシェアを目指すとしている。

また、ある超大手企業グループは新規事業展開の基準を3年間で年商30億に満たないものは、撤退するとしている。逆にみると年商30億未満マーケットには、出てこない意味でもある。

ご参考にしてください。

 

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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

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