コーヒーブレイク ~幸せな人と組織を創る経営者コラム~ 中平 次郎 [ 特集カテゴリー ]

~自らの組織の存続を確実にし、打撃に耐えられるようにすること~ [ 12 ]

「乱気流の時代にあっては、マネジメントにとって最大の責任は、自らの組織の存続を確実にすることである。組織の構造を健全かつ堅固にし、打撃に耐えられるようにすることである。そして急激な変化に適応し、機会を捉えることである」。

そうピーター.F.ドラッカーは述べています。

 

 

乱気流の時代とは、世の中の変化が早く激しいことを意味しています。ITは年々進化し、5Gの世界が少しずつ始まろうとしています。一方で、新型コロナウイルスの感染が世界へと拡大し、人、モノ、金の流れの停滞とともに需要が減少し、供給の課題に直面している企業もあるかもしれません。ここ1~2カ月で景況感も急激に変わったのではないかと思います。

またオリンピック開催前に、在宅勤務(テレワーク)や時差通勤がより一層進み、都心の人混みを避けて仕事をするスタイルが広がりつつあります。在宅勤務やフレックスになったら、仕事そのものの成果でしか会社員は判断されなくなり、実力主義、成果主義へとさらに移行し、企業は、「オフィスがいらないなら正社員じゃなくていい。正社員として雇わなくてもいいのでは?個人事業主化して、仕事の成果分だけ報酬を支払う完全歩合制にすればいい」といった話になってくることも、今後考えられます。

いずれにせよ、新型コロナウイルスという困難な課題を乗り越えることにより、社会が大きく変化する可能性があると考えています。今回のように世界を揺るがす衝撃や痛みをきっかけに、私たちの価値観に変化が生じ、世の中のニーズや社会が求めるものも変わってくるように感じます。

ドラッカー氏が言うように、まずは、私たち経営者が自分たちの組織の存続を確実にし、打撃に耐え、ピンチを乗り越えていかないといけません。そして、急激な変化に適応していく中で全ての事業を見直し、機会を捉える努力をするとともに、組織強化のために教育に投資することも重要だと思います。今回のコロナ騒動がすぐに鎮静化するかどうか、まだ見通せないところがありますが、今年私たち経営者が集中すべきテーマは、「マーケティングとイノベーションによって顧客を創造すること」ではないでしょうか。これは実際、ドラッカー氏が社長学のテーマにおいて述べられている、もっとも重要な「経営者の仕事」になります。

とてもシンプルで、フォーカスしやすいと思いますが、実は奥も深く、実際は「マーケティング」と「イノベーション」、そして「顧客創造」の3つのテーマに取り組みなおすことになります。「マネジメントには基本とすべきもの、原則とすべきものがあり、それらの基本と原則は、それぞれの企業、政府機関、NPOのおかれた国、文化、状況に応じて適用していかなければならない。基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する。基本と原則は、状況に応じて適用すべきものではあっても、断じて破棄してはならないものである。転換期にあって重要なことは、変わらざるもの、すなわち基本と原則を確認することである」と氏は警鐘を鳴らします。

ここからは普段、後継者育成の仕事で次期経営者の方に教えている実践的なドラッカーの問いです。「現実の顧客はどのような人たちなのか」、「継続的に顧客になってくれている人はどのような人達か」、「その人達は、なぜ顧客になってくれているのか」、「顧客でなくなった人はどのような人達か」。すでに予算計画を下回っていたとしても、まずは冷静に「今」の現状分析からです。それを踏まえ、「誰が顧客になりうるか」、「本来、誰が顧客であるべきか」。そして、「顧客の居場所は変化するか」。

これらの問いは、「ドラッカー5つの質問」の中にある重要な問いです。是非、この機会に問いかけてみてはいかがでしょうか。