平成事件簿-25
「精神鑑定②」
三沢明彦
正常か、異常か。それを判断する3つの物差しがあるという。平均規準、価値規準、医学的規準である。社会の平均値を正常とする見方は、多数者正常の原則ともいわれるが、少数者の差別、排除に結びつきやすい。価値基準の物差しは常識だ。しかし、価値観は国や地域、文化、時代によって変わり、個人によっても異なる。となると、医学的基準に客観性を期待したいところだが、これまた心もとない。精神医学は科学としては未成熟であり、医師の主観によって診断結果が左右されがちだからだ。