◀平成事件簿▶
暴力団(上)
東京・桜田門。警視庁9階にある記者クラブの電話が鳴った。ネタ元の刑事からだ。「知り合いの組長に会ってほしい」と彼は切り出した。唐突な話に「なぜ」と問うと、「世話になっている」と言葉を濁した。暴力団対策法(暴対法)施行から1年後の平成5(1993)年、警察取材チームのサブキャップとして暴力団壊滅キャンペーンを展開していた頃のことだ。「言い分を聞いてくれ」と広域暴力団の組長に頼まれたようだが、刑事の仲介なら、身に危険が及ぶこともないだろう。そう思って、ひとり約束の場所に向かったのだが……。